『ホロコーストを懸念し始めたユダヤ人たち』

2014年7月30日

  ほとんどの読者は、ホロコーストという言葉を知っていよう。述べるまでも無く、第二次世界大戦時に起こった、ドイツによるユダヤ人大量虐殺の事だ。しかし、現実はドイツだけではなく、多くのヨーロッパの国々が、これに協力したのだ。

  ユダヤ人は歴史を通じて、常にマイノリテイとして、その時々の悪役に仕立て上げられ、犠牲になってきたのだ。そうして各国の権力者たちは、社会の不満をユダヤ人に向けることにより、体制を守ってきたということだ。ロシアを含め、ヨーロッパの国々の中で、ユダヤ人に対する迫害が起こらなかった国は、皆無と言えよう。

  今回ヨーロッパ諸国で起こっている、イスラエルのガザ戦争に対する反対運動は、次第に激しさを増している。そして、イスラエルばかりではなく、ユダヤ人に対する憎しみとなってきているのだ。反セムの波がうねりを大きくしているのだ。

  そもそも、今回のガザ戦争が始まる以前から、ヨーロッパやロシアでは、反ユダヤの感情が、大きくなってきていた。それがガザ戦争で一気に表面化したということであろう。

  だいぶ前になるが、この中東TODAYでフランスに居住する、85パーセントのユダヤ人が移住したい、と考えているということを伝えしたが、それは今日ある状況を、察知していたためであろう。弱い兎の耳は長いのは、常に自身を守るために、聞き耳を立てているからなのだ。

  ヨーロッパの不況と失業の増大、なかでもアフリカ諸国からの、合法非合法移民者たちの生活は、悪化の一途をたどっている。彼らの不満が怒りに変わり、それが暴動を起こさないように、ヨーロッパ諸国がユダヤ人に怒りの矛先を向けたとしても、不思議はあるまい。

  そう思ったイスラエルやヨーロッパのユダヤ人は、今後の危険を世界に訴え始めている。そのなかから遂に『ホロコーストの再現』という言葉が聞かれるようになってきた。そこまで事態は切迫しているのであろう。

  アメリカもイスラエルが考え期待するほど、イスラエル支持の立場をとっていないようだ。関係する中東の国々も、大声を出しはしても、具体的な解決案を出さないでいる。唯一、停戦案を出したのはエジプトだけだが、エジプトとハマースとの関係は、最悪の状態にあるし、パレスチナ自治政府のマハムード・アッバース議長も、人望を下げていて、具体的な関与は出来ていない。

  ハマースはあくまでも経戦の構えであり、妥協しようとはしていない。これではイスラエル側も同様に、停戦を一方的に発表したとしても、意味をなさないだろう。その結果は、ガザ戦争が長期化し、イスラエル側にも相当の、犠牲が生まれることになろう。

  そして、戦争が長引けば長引くほど、ガザのパレスチナ人の犠牲者数は増大し、世界中でユダヤ人に対する非難が、拡大していこう。そして、それは非難ばかりではなく、物理的にもユダヤ人に被害が及ぶ状況を、創り出していこう。

  イランの将軍の一人が『今回のガザ戦争はイスラエル滅亡への過程だ』と語っているが、そこまではいかないまでも、イスラエルとユダヤ人にとって、相当厳しいものとなっていこう。

  力による解決ではなく、辛抱強い交渉による解決を、イスラエルとパレスチナ双方に言えるのは、世界の中でも日本しかあるまい。その大役をこなせるだけの人物が、日本にいるのかということになるが、英雄は時代が創り出すものであって、英雄になろうとした人物が、時代を創るのではない。

日本政府はこれぞと思う人物に、それを託すべきではないのか。そして、その人物はまさに命がけで、この大役を担った時、おのずから結果が出てこよう。