ガザで600人前後の死者を出している、イスラエルとハマースの戦争は、さすがにヨルダン川西岸地区にも、影響を及ぼしているようだ。ヨルダン川西岸地区では、毎日各地で抗議デモが起こっている。
そのデモはイスラエルに対するものであると同時に、マハムード・アッバース議長に対するものだ。デモ参加者は『マハムード・アッバース議長はエジプトやイスラエルと共謀している。』『マハムード・アッバース議長はガザでパレスチナ人が殺されているのに、何もしようとしない。』といった内容だ。そのことに加えて、マハムード・アッバース議長が何ら強いリーダーシップを、発揮できないでいることに対しても、抗議の声は上がっている。
デモ隊はイスラエルへのゲートに向かうのを、パレスチナ警察に阻止され、双方に負傷者が多数出てもいる。パレスチナ住民と警察との衝突は、ヨルダン川西岸各地で起こっており、状況は最悪の事態となっている。
内部告発者の話によれば、ナブルス市でのデモでは、警察が実弾と催涙弾を発砲したということだ。実弾を発砲しなければならないほど、デモの状態は危険が高まっていた、ということであろうか。
デモ隊はイスラエルのガザ攻撃を非難するとともに、マハムード・アッバース議長非難になり『辞任しろ。』とまで叫ぶようになっているが、そうした中で、マハムード・アッバース議長は彼の家族が、危険にさらされると判断したのであろうか、ヨルダンのアンマンにある彼の自宅に、家族全員を非難させた。しかも、それは秘かに行われたために、パレスチナ人の怒りは、ますます強くなっているようだ。
最近では、マハムード・アッバース議長に対する非難が、大分高まっているのであろうか。彼の率いるファタハ組織のメンバーも、抗議デモに参加しているということだ。しかも、それはパレスチナ自治政府の本部があるラマッラ市や、ナブルス市、トルカレム市でもそうなのだ。
今後、ガザ戦争が長期化していけば、マハムード・アッバース議長の無能ぶりが、パレスチナ人の前で明瞭になり、ついにはパレスチナ自治政府議長のポストから、追放されるかもしれない。
そこまで考えての、家族逃避なのかどうかはわからないが、ガザ戦争はマハムード・アッバース議長にとって、極めて危険な状態を生みだしつつあることは、確かであろう。
もう一つ考えられることは、ガザ地区ばかりでなくヨルダン川西岸地区からも、イスラエルに対する攻撃が始まり、ヨルダン川西岸地区もイスラエル軍の攻撃対象になる可能性が、あるということではないか。そうなれば、事態は収拾が付け難いだろうし、イスラエルにとっても、国家の存亡がかかった、死活的戦争ということになろう。