『ガザ戦争で窮地に立つかシーシ大統領』

2014年7月19日

 

 ガザへのイスラエル軍の侵攻で、状況は緊迫している。これに先立って発表された、エジプトによる停戦仲介は、ガザのハマースが拒否し、イスラエルも続いて無視した。そして戦争は既に11日目を過ぎている。

 ガザにイスラエル陸軍部隊が侵攻したことで、空爆とあわせ死傷者の数が、激増しているようだ。死者は既に300人を超え、負傷者も1000人をはるかに超えている、と報告されている。

 ハマース側は徹底抗戦を宣言しており、停戦する様相は見えていない。他方、イスラエル側に対しては、アメリカのオバマ大統領も、防衛のための戦闘は認めながらも、これ以上の戦闘の拡大には反対すると語った。

 こうした状況下では、どうしてもガザを救える地理的位置にいる、エジプトが非難の矢面に立つことになる。『ガザのラファゲートを開いてパレスチナ人の負傷者を受け入れ治療をしろ』『ガザのゲートを開いて人道支援物資を入れろ』『ガザのゲートを開いて避難民を受け入れろ』といったものだ。

 まことごもっともなのだが、エジプトにとっては決して、容易なことではないのだ。ガザのハマースなどが、現在のエジプトのシーシ大統領体制に敵対し、シナイでエジプト軍などへの、攻撃を加えてきていたのだ。つまり、ハマースはイスラエル以上に、エジプトにとって危険な存在なのだ。

 これではエジプト政府は、ハマースの味方をしたくないだろう。もし、そうすれば今度は、エジプトそのものが危険に、晒されることになるのだからだ。そればかりではない。多くのパレスチナ人負傷者と、避難民を受け入れれば、その中にはテロリストや、ハマースの戦闘員も含まれていようから、将来、彼らがエジプトで破壊工作を、実行する懸念も大いにあるのだ。

 そうでないとしても、多数の避難民と負傷者を受け入れれば、そのパレスチナ人たちが宣伝戦を展開し、世界のマスコミに対して、あることないことを語るであろう。それはイスラエルとエジプトとの関係を、悪化させる危険性があるし、エジプト国民の感情に訴えることにもなろう。

 そうなれば『イスラエルと戦争を始めろ』『シーシよ立ち上がれ』といった戦争をあおる声が、エジプト国内で大きくなろう。いまのエジプトには、イスラエルと戦争をするような余裕は皆無だ。

 シーシ大統領にいま出来ることは、声を大にして戦闘行為を止めろ、と叫ぶことであり、国連や欧米に働きかけることのみではないのか。イランやトルコはこれを機会と、エジプト非難をしているが、これは無責任以外の何物でもあるまい。

エジプトがラファゲートを開いたら、イランやトルコは戦闘員や、救援物資を送るというのだろうか。イランやトルコはイスラエルに対して、何らかの威嚇をしたのだろうか。何もしていない、単にエジプトに責任をなすりつけ、非難しているに過ぎないのだ。