イスラエルのネタニヤフ首相は、ついに我慢の限界を迎え、ガザへの陸軍投入を決定した。それは火曜日(7月15日)の夕刻に、内閣で決められたようだ。その一日前の7月14日に、エジプト政府は停戦を呼び掛けていた。
しかし、ハマースはこのエジプトによる、停戦呼びかけを拒否していた。ハマースに言わせると、停戦はイスラエルを有利にするだけだ、ということだった。確かにそうであろう。そもそも、ハマースはイスラエルが認めておらず、交渉の相手にはしてもらえないのだ。ハマースはエジプトイスラエルとのゲートを開き、イスラエルが敵対行動を止め、捕虜や囚人の人交換を望んでいる。
今回イスラエル政府が、陸軍の投入を決定したことで、戦闘は拡大すると予測されるが、イスラエルが被るであろう損失は、二つに分けられよう。一つは産業界が受けるダメージであり、もう一つはイスラエル軍兵士が被るであろう、人的被害だ。そのいずれもイスラエルという国にとっては、厳しい将来を生み出すことになるのではないか。
まず産業界がこれまでに受けたダメージだが、戦闘開始から8日間で被った額は3・45億シェケル、つまり日本円にすると、101億8000万円ほどになると報告されている(1シェケル=29・5円)。その内訳は労働者の欠勤によるものであり、他は新鮮な原材料の無駄だ。
特に生鮮野菜や果物の加工業者や農場経営者は、原材料が駄目になるために、大きな被害を受けており、彼等はイスラエル南部ガザに近い地域に、工場や農場を抱えている。そして都市部では工場労働者の欠勤や、施設に対するダメージのようだ。
それにもかかわらず、イスラエル政府は陸上戦闘を含めた、ガザのハマースとの戦いを『必要なだけ継続する』と語っている。つまり、いつ終わるか分からない、ということだ。
他方、ハマース側も負けてはいない。『イスラエルが戦争を仕掛けてきたことは、大きな損失を被ることだ』と警告している。ハマース側はゲリラ戦とロケット攻撃で応戦し、当分の間やめるつもりはない、ということのようだ。
ハマースのロケット弾やミサイルは、イランからの援助とリビアなどから、密輸されてきたものであり、ホームケメイドの物であり、実質的にはそれほど高くついていないようだ。
しかし、イスラエル側が放つ迎撃ミサイルなどは、ハマースと違って安価ではない。ハマースの飛ばすロケット弾やミサイルを撃墜するためには、膨大な金がかかっているということだ。
そして陸上戦闘では、イスラエル側にこれまでになかったような、大きな人的被害が出よう。そのことは、イスラエル国民の間に厭戦気分を広げていき、イスラエル側が停戦を呼びかけざるを得なく、なるかもしれない。