イスラエルによる、パレスチナのガザ地区に対する攻撃が始まって、すでに1週間を経過している。その間に170人以上のパレスチナ人が死亡し、1500人を超える人たちが負傷した。
ガザ地区を支配する、ハマースのリーダーであるイスマイル・ハニヤ氏は、イスラエルとの戦闘継続の理由について、カタールのアルジャズイーラ・テレビに、次のように語っている。
『ハマースは停戦のために戦ってきたのではない。イスラエルの封鎖を緩和し、閉塞状態にある生活から解放されるためだ。ガザの住民は誇りある生活がしたいのだ。』というのだが、そのためにガザ地区の多くの公共施設が破壊され、個人の住宅が破壊され、多くの死傷者が出ているというのか。
こうした意見に対して、当然イスラエルが攻撃していることが悪いのだ、と日本人はイスラエルを非難するだろう。多くの優しい日本人は、パレスチナ人の悲惨な状態に、心を痛めているであろう。
しかし、問題はそう簡単ではないのだ。いま世界中で反ユダヤの感情が、拡大している。ヨーロッパに居住する多くのユダヤ人が、移住を考えているのだ。しかし、現実にはユダヤ人がヨーロッパから逃れて、移住して行く先はないのだ。
結果的に、大きな不安を抱きながら、ヨーロッパに居住するユダヤ人たちを、温かく受け入れてくれるのは、イスラエルしかないということになる。だからイスラエルは世界の非難をものともせずに、強引にヨルダン川西岸地区に、移住してくるユダヤ人のための、入植地を増設しているのだ。
一旦はパレスチナ側に返還したガザ地区も、将来のユダヤ人移住者のための居住空間として、イスラエルは考えているであろう。そのガザ地区からは、イスラエルの領土に対する、ロケット攻撃が続いているのだ。
ヨーロッパに居住するユダヤ人ばかりではなく、イスラエルに居住するユダヤ人にとっても、不安は同じように存在しているのだ。その不安を取り去るためには、ガザ地区からの攻撃を阻止しなければならない、とイスラエル政府が考えても、何の不思議も無かろう。
パレスチナ側はパレスチナ側で、このまま行けば、やがては全てのパレスチナの土地が、イスラエルによって奪われてしまう、という不安が付きまとうだろう。それを阻止するためには、闘いを継続しなければならない、という結論に到達することになる。
つまり、イスラエル側にもパレスチナ側にも、戦闘を継続する明らかな理由が、存在しているのだ。問題はその戦闘が、極めて抑制の効いた状態で、これまで繰り返されてきたことではないのか。
パレスチナはこれまで、真剣勝負を一度もしていないのではないのか、ということだ。同時に、それはイスラエル側にも真剣勝負をさせない、で来ていたということではないか。なれ合いのような戦闘が繰り返されている中で、世界からはパレスチナに、お涙の援助が送られ、パレスチナ人たちはその援助で、食いつないできていたのではないのか。
今回のハマースのイスラエルに対する戦闘が、真剣勝負なのであれば真剣に停戦の働きかけも必要であろうし起ころう。しかし、今回の戦闘がこれまでと同じ心理の中で行われているのであれば、他国が提案する停戦案もいい加減なものに留まろう。その後に残るのは、庶民の犠牲だけではないのか。