去る6月11日に、イラクのモースル市にあるトルコ領事館がISILによって襲撃され、49人の館員や特殊部隊員が人質にとられた。 これに先立ってモースル市では、トルコ人の運転手32人が6月9日に人質に取られている。
運転手はその後、7月3日に釈放され帰国したが、領事館で捕まった人質はその後も、釈放されていない。ISILの部隊はこのモースル市を、6月10日に占領し、以後支配を続けている。
トルコのエルドアン首相にとっては、モースル市のトルコ領事館で、人質になった49人を一日でも早く、釈放したいということは、述べるまでも無かろう。しかも、8月にはトルコの大統領選挙が控えているのだ。人質釈放が成功すればエルドアン首相に有利に働き、釈放が遅れることになれば、彼の支持には陰りが出よう。
そこで、エルドアン首相は7月10日ISILに対して、釈放を呼びかけることとなった。『貴方がたが本当のムスリムであるならば、我々の兄弟を釈放する必要がある。それを期待する。』と語った。
しかし、このエルドアン首相の言葉には、どうも信じがたい部分がある。彼は自身をカリフ(預言者ムハンマドの後継者)と語り、大統領選挙では預言者ムハンマドの名を、選挙のロゴに使っている。
今回の一連の人質事件は、彼が仕組んだものではないのか、という疑問が沸いてくる。もし、ISILの意思で人質にしたのであれば、既に殺害していた可能性の方が大きかろう。トラック・ドライバーと領事館関係者の合計は、81人にも及ぶのだ。これだけの人数をISILは何処で人質にし、どう対応していると言うのか。
エルドアン首相は8月の大統領選挙を前に、ラマダン月の終わる前に釈放しろ、とISILに呼びかけている。それが実現されれば、トルコ国民は『エルドアン首相による奇跡』とでも呼ぶのだろうか。
これまで明かしてきたように、ISILを支援していると言われているのは、トルコでありイスラエルでありクルド自治政府でありアメリカでありサウジアラビアだということだ。イラクのマリキー首相はクルド自治区を、ISILのセイフ・ヘイブン(解放区)と呼んでいる。
こうしたことを考えると、エルドアン首相のISILに対する人質釈放要求は『やらせ』ではないのか。釈放されて帰国した領事館関係者と家族の涙の対面、エルドアン首相をたたえる大きな波、これで大統領当選は確実か?もし、モースルの領事館で人質となったトルコ人が、ラマダン月の終わる前に釈放されたならば『やらせ』は確実ではないのか。