『サウジアラビアのISILへの関与と未来』

2014年7月16日

 

  これまで何度となく、いまアラブで暴れまわっている、イスラム原理主義組織がサウジアラビア、カタール、トルコなどによって、支援されていると書いてきた。事実はその通りのようだ。そして、そのことは将来ブーメラン効果を生み出し、これらの支援を送っている国々に、災いをもたらすとも書いてきた。

  最近、イギリスの情報部であるMI6のメンバーが、サウジアラビアの官民のISIL(イラク・レバント・イスラム国家組織)への関与を明かした。もちろん、このことを明かした人物は、自分の名前を明らかにしていないが、それは当然の自己防衛策であろう。

  彼に言わせると、サウジアラビアの国民の多くが、ISILなどの組織に対して、寄付を送っていたということのようだ。そして、その背後にはバンダル元情報長官が、いたというのだ。

  バンダル情報長官はシリアの内戦に、初めの段階から深く関与していたし、彼の指示でサウジアラビア政府は、巨額の援助を反政府派に送り、武器や戦闘員までも送り込んでいたことは、すでに各方面から伝えられていた。

  個人的なISIL組織などへの寄付は、サウジアラビアだけではなく、カタールからも行われている。両国政府はそれらの寄付行為を、黙認しているということだ。そして、その個人の寄付は現在では、イラクのISILに主に送られている、ということのようだ。

  MI6のメンバーに言わせると、サウジアラビア政府はアラブのスンニー派を強化するために、こうしたことを行っているのだが、それはイランのシーア派に対する敵対心からであろう。

  このMI6のメンバーは現在、活発な戦闘を展開しているISILについて『この組織はアルカーイダとは異なり、より良く組織づくられている。したがって、将来このISIL組織が、西側諸国をターゲットにした場合には、最悪なものとなろう。』ということのようだ。

  MI6のメンバーに言わせれば、ISILはカンボジアのクメール・ルージュのような組織であり、終わりの無い残虐な戦闘を継続する、組織だということだ。将来その犠牲となるのはイランであるかもしれないし、サウジアラビアであるかもしれない。

  こうした過激な組織は、結果的には大衆から受け入れられず、やがては消えていく運命なのであろうが、消滅までの期間がどれほどのものであるかについては、誰も正確な予測をすることができない。つまり、ISILの組織がしっかりしたものであるだけに、イスラム世界は当分の間相当の犠牲を、払い続けなければならないということだ。