『シリアの大統領選挙結果』

2014年6月 5日

 

  3日ほど前に、シリアで大統領選挙が実施された。在外シリア人の投票は、それ以前から行われていたが、ここにきて全体の選挙結果に関する、詳細が発表された。

  発表された投票結果は、現職のアサド大統領が887パーセントを得票して、当選ということになった。誰もが予想した結果であり、驚くことはあるまい。

あえて言えば、エジプトのシーシ候補の得票率が、96パーセントを超えていたことに比べ、887パーセントというアサド大統領の得票率は、常識に近いということになるのではないか。

  アサド大統領が得票したのは10319723票であり、ヌーリー・ハッサーン候補は500279表で43パーセント、もう一人の候補であるヘジャール・マーヘル氏は、372301票を獲得し、32パーセントの得票率となっている。

  今回の選挙は流血の洗浄で行われたわけだが、それにもかかわらず、投票率は73パーセントに達した、と選挙委員会は発表している。その投票参加者の合計数は11634412人であり、本来の有権者数は、15840575人とされている。

  つまり、投票参加率は7342パーセントだということだ。しかし、無効投票数は442108票で、全体の38パーセントに達している。

  この選挙結果詳報を見てどうとるかは、それぞれの考えであろう。欧便諸国は押し並べて、今回の選挙を無効と否定的な見解を述べているが、それは事実がどうあれ、アサド大性をこれ以上継続させたくない、という心理からの判断ではないのか。

  これとは違い、イランやアラブ諸国は前向きな捉え方をしており、なかでも、

シリアのアサド体制擁護側に立つイランは、今回の選挙結果は、シリアの安定につながるものであり、民主化への一歩だと讃えているようだ。

  エジプトの選挙結果が出た後でも書いたように、大衆はエジプトでもシリアでも、社会が安全であり安定することを、最優先に考えていよう。アサド体制が独裁であるか否かについては、意見の分かれるところだ。

  もし、シリアに独裁色の無い政権が誕生すれば、社会は混乱状態が続き、民主化も発展も、個人の自由も消えて無くなろう。アラブ世界に限らず、発展段階にある国家では、一種の独裁は必要悪だということを、忘れてはなるまい。

  多くの人種や宗教派閥、部族の違いや出自の違い所得の違いや知的レベルの違いの混在するなかでは、民主的な手法だけでは統治できない、ということを忘れてはなるまい