最近になって、ヨルダン国内に相当数のシリア人工作員が、侵入し潜伏ていることが、ヨルダンの情報部の調べで分かった。特にシリアの大統領選挙をめぐり、彼らが活動を開始したからだ。
それまでは、彼等の一部は難民として、UNHCRに登録し、難民救援機関の支援を受けていたし、ある者はビジネスマンとして、あるいは奨学生として、ヨルダン国内に滞在していた模様だ。
それが、シリアの大統領選挙が近付くと、特にヨルダンの首都アンマン市にある、シリア大使館そばで『シリアの大統領選挙に参加しよう。』というスローガンを掲げて、あからさまに活動し始めたのだ。
そのことは同時に、シリアの大統領選挙を妨害しようとする、反シリア体制派の活動を、阻止することであり、同時に監視することでもある。それが彼等スリーパーの託された、現在の役割なのだ。
そうした環境の中で、35000人がシリアの大統領選挙で、投票した模様だ。もちろん、その多くはアサド大統領と同じ、アラウイ派のシリア人であり、貿易業者や学生などだ、と言われている。
シリアからの工作員の侵入を阻止すべく、ヨルダン政府は空路で入国を試みる者を含めて、監視を強化している。しかし、現段階ではシリア難民として、ヨルダンに入り込んだシリア人の数が、膨大になっていることから、監視活動は容易ではあるまい。
シリアからの難民数は、ヨルダン国内だけで140万人おり、そのうちの65万人が、UNHCRに登録できている。
近い将来、ヨルダンとシリアとの関係が悪化した場合、スリーパーたちは今回の大統領選挙をめぐる、シリア人難民の行動監視だけではなく、ヨルダンをターゲットにすることも懸念されよう。
そのことに加え、今後のシリア情勢の変化によっては、シリアの反政府ジハーデストたちが、シリア・ヨルダン国境で戦闘を展開したり、ヨルダン国内に拠点を築くこともありえよう。
つまり、隣国シリアで起こっている災禍は、やがてヨルダンにも不安を、呼び起こしうるということだ。