『シーシ大統領誕生の陰で始まった恩赦』

2014年6月 2日

 

  エジプトの大統領選挙の結果は、シーシ候補が93パーセント以上を得票して当選した。対抗馬のサッバーヒ候補は、3パーセント程度の得票数であったが、彼の陣営は不満はあるものの、あまり文句をつけていない。敗因については、全国の有権者を回り切れなかったからだ、と説明している。

  シーシ候補が大統領に当選したことは、大半のエジプト国民の望むところであろう。エジプト国民は何にもまして、一日も早く国内が安定してくれることを、望んでいるからだ。それは軍によるしかあるまい。

 同様に、湾岸のサウジアラビアやクウエイト、アラブ首長国連邦も、大喜びであろう。シーシ新大統領はムスリム同胞団に対する、徹底的な対応を採る、と明言しているからだ。

  こうした歓喜の嵐の中で、最近話題に上り始めたのが、現在収監されている2人の元大統領に対する、処遇をどうするかということであろう。述べるまでもなく、ムバーラク元大統領はシーシ新大統領の元上司だからだ。

  そして、もう一人の元大統領はムスリム同胞団のモルシー氏だ。彼をどう処遇するかは、シーシ新大統領の腕の見せどころではないか。現状のまま放置すれば、ムスリム同胞団の反政府活動は今後も続こう。かといって釈放を安易にしてしまえば、スポンサー国である湾岸3カ国との関係を、損ねることになる。

  ムバーラク元大統領については、彼の弁護士であるデーブ氏が『シーシ大統領に恩赦を依頼しない。』と語っている。ムバーラク元大統領の意向は、裁判所が下す判決を甘受する、というもののようだ。しかし、シーシ新大統領は何らかの便宜を、図るのではないかと思われる。

  イブン・ハルドーン・センターの創設者であり、カイロ・アメリカン大学のサードデーン・イブラヒム教授は『ムバーラクもモルシーも恩赦すべきだ。』と語っている。

  サアードデーン・イブラヒム教授は、預言者ムハンマドが勝利して、メッカに凱旋して戻った時、クライシュ族を許した例をあげているし、南アフリカのネルソンマンデラ氏が大統領に当選した時、それまでの敵を許していると、恩赦の理由を説明している。

  これは直接関係あるかどうかは分からないが、テレビ番組の責任者であるハーリド・ユーセフ氏は『シーシ大統領は逮捕された若者たちに同情的だ。シーシ大統領は近い時期に、若者たちを釈放するかもしれない。』と語っている。

  この若者たちへの処遇は、大物政治家である、ムバーラク、モルシー両氏への対応に向けた、一歩かもしれない。