マスコミは常に権力に対して、反発するのが習性のようだ。今回のエジプトで行われた大統領選挙についても、シーシ大統領候補の当選を、喜ばない内容の記事が出ている。しかし、それはエジプト社会のことが、分かっていないからではないのか。投票率が低かったのは、以下のような理由からではないのか。
第一に挙げられることは、選挙投票前からシーシ大統領候補の当選が、確実視されていた。このため、シーシ大統領候補を支持する人たちのなかにも、投票所に出向かなかった人たちがたくさんいた。
第二に挙げられることは、5月末のエジプトはもう日本で言えば、猛暑の時期であり外出は苦痛であり、分かっている投票結果に、あえて参加することに意味を見出さない。
第三に挙げられることは、前回の選挙の折にムスリム同胞団が行ったような、バスをチャーターして投票所に連れて行く、というサービスが無かったことだ。当然のことながら、不便な場所に住んでいる人たちは、投票所には向かわなかった。
第四に挙げられることは、シーシ、サッバーヒという二人の大統領候補の争いであり、結果が事前に出ていたことから、以前の選挙のようなモルシー・ムスリム同胞団候補と、シャフィーク前体制派候補のような、明確な白黒の違いが、両候補の間には存在しなかった。
確かに選挙では投票日を一日増やし、政府は投票率を高めるように工夫した。そのことによって、モルシー当選時よりも国民がシーシ大統領候補を、支持したとしたかったのであろう。
常識的に考えれば、対抗馬のサッバーヒ大統領候補では、いまのエジプトの難局を乗り切るのは難しかろう。国内のテロ問題の解決は、単に国内だけではなく、リビアやパレスチナのガザ地区との関連があり簡単ではない。
テロ解決なしには、観光資源が外貨を呼びつけないし、外資の導入も起こり得ない。このテロ対策には強硬な手段が必要であり、エジプトの新大統領は外部の非難があろうとも、強硬手段を持って解決するしかあるまい。彼は軍の出身であることからそれが可能だが、サッバーヒ氏にはその手段があるまい。
サウジアラビアやクウエイト、アラブ首長国連邦といった最大の支援国も、シーシ大統領なら安心して関係を構築していけ、しかも、自国の安全にも寄与してくれると考えていよう。だからこそ、アラブ首長国連邦の外交担当国務大臣が、継続してエジプトへの資金援助を行う、と発言したのだ。批判よりも、今はシーシ新大統領のお手並み拝見、ということにすべきであろう。