ヨルダンでも、ISIL(イラク・レバント・ィスラム国家組織)の動きが、懸念され始めている。イラクやシリアでの、ISILの動きを見れば、周辺諸国が神経質になるのも、無理からぬことであろう。
イスラエルとアメリカは、ヨルダンが直面するであろう、ISILの脅威に対して支援する、意思を明らかにし始めている。ヨルダン政府は対テロ特殊部隊の訓練を、首都アンマンで行ったが、それはイスラエルやアメリカの顧問による、指導を受けたものではないかと思われる。
イスラエルにしてみれば、隣国ヨルダンでISILが活動を活発化し、ヨルダンがISILの手に落ちるようなことになれば、直接国境を接する国が、イスラエルにとって脅威となるから、ヨルダン支援は当然のことであり、それは、ヨルダンの治安確保というよりも、イスラエル自身の治安確保であろう。
従って、イスラエル軍は要請さえあれば、何時でもヨルダンのハーシム王家を防衛するために、派兵できる準備が、整っているようだ。
アメリカにしてみれば、イスラエルと並んで最も信頼できる、数少ないアラブの国ヨルダンの体制が、不安定化することは、アメリカの国益と世界戦略上、危険なことになろう。
アメリカの政府高官は、ヨルダンがISILの全面的な攻勢に晒されれば、持ちこたえられないだろう、と判断しているようだ。それはそうであろう。ヨルダンの人口は630万人前後であり、しかも、70パーセント以上がヨルダンの王制に批判的な、パレスチナからの移民で、占められているからだ。
従って、アメリカ政府はヨルダンの防衛に、協力する意思があるが、ヨルダン政府側はあまりこの点について、明らかにしたくないようだ。
在米ヨルダン大使館のスポークス・ウーマンのダナ・ダウード女史は、ヨルダンの国境は完全に防御されているし、ヨルダン軍は精鋭だと語っている。また、現段階では国境や国内で、異常な動きは観察されていないとも語っている。
ヨルダンの専門家も、ヨルダンはイラクが直面しているような、状況にはなるまい、と判断しており、イスラエルやアメリカの支援は、少なくとも現段階では、必要がないと見ているようだ。
しかし、ヨルダンの場合は反体制派の動きが、活発化する傾向にあることから、ISILのような組織が活動を始めれば、それを支援する国内の組織や個人がいることは、否定できまい。
従って、ヨルダンはこれから国内の反体制派監視と、ISILの同国への侵入を阻止する努力を、余儀なくされそうだ。