これまでも何度となく報告したし、一部では報じられてきたのだが、サウジアラビアのイスラム過激派に対する支援が、アメリカの研究機関のレポートにも、記されるようになってきた。
サウジアラビア政府は自国内の犯罪者に対して、イラクやシリアでのテロ作戦に、参加することを条件に出獄させ、シリアやイラクに送り込んできていた。そうすることによって、国内での政治的な不満のガス抜きもしていた、ということであろう。
もちろん、それだけではなく、シリアのアサド政権や、イラクのマリキー政権が、シーア派であることから、シーア派政権打倒も、目的であったのだ。
サウジアラビア政府はバンダル情報長官時代に、政府そのものがイラクでいま暴れている、ダーイシュ(ISIL)のスポンサーであり、武器や資金を提供していた。そのサウジアラビア政府のスタンスには、バンダル情報長官辞任後も、あまり大きな変化はないようだが、最近では、民間からのダーイシュなど過激派に向けた、資金援助を隠すために、クウエイトをトンネルに使っているようだ。
クウエイトは他の国に比べ、外国送金規制と監視が緩いからであろう。それは、クウエイトには多くの個人企業が存在し、巨額の資金の移動が、頻繁に行われているためだ。
さて、サウジアラビアのこうした官民からの、ダーイシュなど過激派に対する資金援助は、これからどのようなことを生み出すのだろうか。ダーイシュはその戦闘場を、シリアとイラクに限っているわけではない。最近では、欧米もその対象だと語っているし、クウエイトやヨルダンも含まれている。
それでは、サウジアラビアはどうなのであろうか。もちろん、攻撃対象の例外ではなるまい。そればかりか、サウジアラビア政府が突然、資金提供を止めるようなことになれば、恨みがそこで生まれ、ダーイシュはサウジアラビアに、攻撃をかける危険性があろう。
以前から書いてきたように、ダーイシュなどを始めとする、イスラム過激集団は、根なし草であり、スポンサーの意向に沿って、過激な行動を起こすだけではなく、場合によってはそのスポンサーに対しても、攻撃をしかけるということだ。
ダーイシュは欧米人にも参加を呼び掛けており、言ってしまえば戦闘を趣味とする、あるいは虐殺などを好む異常性格の変人の集団でもある。彼等は殺戮と金があるところならば、何処でも集まって戦うといということだ。
その彼らがいま狙っているのは、石油施設を抑えて利益を上げること、遺跡からの発掘物を売ること、武器の取り引きをすることなどによって、金を得るということだ。もちろん、サウジアラビアのような、巨額の資金を提供する国は、大歓迎されよう。