『ISILのイラク侵攻は分割につながるか』

2014年6月25日

 

  イラク国内にISILが侵攻し、たちまちのうちに北部をほぼ制圧した、という情報が伝わってきているが、一体この動きは何を目的にしているのか、という疑問が沸いて来よう。

  このISIL の情報に加え、イラク三分割の話がネットやマスコミを通じて、再び流れ始めてもいる。加えて、イラクのサダム体制下のナンバー2が軍(ミリシア)を動かし始めた、という情報もあり、サダム体制打倒を巡り動いていたアハマド・チャラビ氏も、表舞台に昇り始めている。

  このイラクの現状を前に、ほとんどの日本人にとって、これから何がイラクで起ころうとしているのかが分かるまい。そこで、思い切った予測をしてみようと思う。その予測は的中するかもしれないし、外れるかもしれないということを、初めにお断りしておこう。

  アメリカはイラクのサダム体制を打倒したが、その後、イラクにはマリキー政権(シーア派)が誕生した。そして、そのマリキー政権は次第にイランとの関係を、強化していくことになり、アメリカはイラク政治のカヤの外に、置かれる形になってしまった。

  これではアメリカがサダム体制を打倒した意味が、無くなってしまう。そこでアメリカは再度のイラク混乱を、期待したのではないか。そこにISILという強硬なミリシア・グループが台頭してきた。しかも、このグループは中東だけではなく、欧米からも義勇軍を受け入れている。

  イラク国内には、マリキー首相のシーア派主導政府を歓迎しない、スンニー派国民が少なくないことから、ISILはスンニー派国民によって、直接間接支援されることになった。加えて、クルドもISILに対して、同じスタンスをとったようだ。

  結果的に、イラク国内ではマリキー首相の率いるシーア派グループ、サドル師が率いるシーア派グループ、クルド、そしてスンニー派グループが出来上がり、その立ち位置を明確にしつつある。

  こうした動きの中で、クルド自治政府のバルザーニ議長は、クルド地区のイラクからの分離独立を、示唆する発言をした。この一言は大きな意味を含んでいよう。つまり、ISILがイラク侵攻をした現在、イラク国内は将来に向けて明確に、分裂の方向に向かっているということだ。だからこそ慎重なバルザーニ議長が、イラクからのクルドの分離独立を、口に出来たのであろう。

  その次に出てきそうな言葉は、イラクのスンニー派が分離独立する、ということではないのか?そして、最終的にはシーア派がイラク南部地域を、抑えるということで、イラクは三分割されるかもしれない。それは、あたかもウクライナのケースに、似ているではないか。