『ISILを巡る噂の数々と現実』

2014年6月24日

 

  アラブに興味のあるほとんどの人は、いま一番関心を抱いているのは、イラクでのISIL(ISIS)の動きであろう。この組織はアラビア語ではダーイシュと呼ばれているが、英語ではイラク・シリア・イスラム国家を表す頭文字のISIS、あるいはイラク・レバント・イスラム国家を表すISIL で呼ばれている。

  そのISILがシリアからイラクに入り、怒涛の勢いでイラク西北部から、中央部に侵攻し、いまでは首都バグダッドから50キロ程度のところまで、進軍していると伝えられている。

  一説によれば、45000人程度とされるこのISILが、何故そう易々と、イラクで勝利し続けていられるのだろうか。それには訳がある。イラク国民の20パーアセント程度とされるスンニー派国民の間では、マリキー政府はシーア派であることから、不満が溜まっているからだ。

  今回ISILがイラクに侵攻すると、このスンニー派国民は敵対ではなく、彼等を歓迎さえしたのだ。加えて、スンニー派のほとんどであるクルド人も、ISILの侵攻を歓迎している。

 ところが、イラクの情報として欧米諸国から伝わってきているのは、ISILによる蛮行だ。ISILが大量に虐殺している、という情報が伝わってきている。それはシーア派国民を大量に、殺しているということなのだ。

  ISILはシーア派国民をみせしめに虐殺し、シーア派政権を震撼させ、しかも、シーア派軍人の戦闘意欲をそぐ方針なのであろう。戦闘せずに勝利するためには、虐殺の恐怖を与えることが、最善の策だと考えているのであろう。

  加えて言えば、西側のしかるべき国家が、ISILのバックにいてサウジアラビアなどに、資金を出させているのだ。そうなると、ISILは出来るだけ世界の耳目を引くような行動をとる方が、スポンサーから金を引き出せるということを、考えるのだ。

  しかし、そうしたISILに対する西側の国の協力も、サウジアラビアなど一部湾岸の国の協力も長続きはすまい。つまり、彼等は現状打破の道具にしか過ぎない、と認識すべきであろう。

  それを感じさせるのは、今回のISILの動きに連動して、サダム体制下でナンバー2だったイッザト・イブラヒムの軍が、イラク国内で戦闘を展開し始めているのだ。

  つまりISILが突破口を作り、それの後には旧サダム体制側が、イラク国内政治の表舞台に、登場してくるのではないかということだ。いずれにしろ、この新たなイラク国内の動きは、石油資源に連結しているととらえるべきであろう。