だいぶ前になるが、IAEAのトップにハンス・ブリックスという人物がいた。彼は極めて独立的な立場であり、欧米の影響を受けず、公正な活動をしていたように記憶する。
その彼が最近になって、極めて重要と思われる発言をした。彼は『7月20日までには、イランに対する核制裁が、解除されるだろう。』と語ったのだ。
その理由はいろいろあるようだが、アメリカやヨーロッパが難しい問題を、抱え込んでいるためだということだ。例えばウクライナ問題、シリア問題などがそれだ。
これらの問題解決の方が、先行するということであろう。確かに、ウクライナ問題がこじれた場合、NATOとロシアとの軍事衝突が懸念されるし、ウクライナでは、それを想定させるに十分なほど、緊張状態が高まっている。
シリア問題しかりであろう。アサド大統領が進める次期大統領選挙の結果は、誰の予測でもアサド大統領の再選、ということになろう。野党側にしかるべき候補がいないことと、野党側が一枚岩にはなっていないからだ。このため野党側は、選挙ボイコットを打ち出している。
次期大統領選挙でアサド大統領が再選されれば、彼は選挙結果を、シリア国民が彼を支持している証拠だと主張できよう。反政府側はあくまでもマイノリテイであり、外国勢力の陰謀による反政府活動だ、と主張することもできるようになろう。
これでは、いままで欧米や湾岸のサウジアラビアやカタール、そしてトルコが反政府側を支援してきた努力が、水泡に帰するということになる。シリアの反政府側にはこれらの国々から、巨額の資金が送られていたし、武器も戦闘員も送られていたのだ。
これまで、イラン政府側もアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国そしてドイツなどによって結成されている、イラン核問題交渉組織(5+1)の要求に応え、合意内容を順守してきている。
過去6ヶ月間イランは合意内容を守り、新たな核燃料の濃縮作業などを止めてきていたのだ。5+1側はイランが核燃料の濃度を、20パーセント以下にするようにも、要求してきたがそれも進められている。
結果的に、5プラス1側は、現状の最優先課題はウクライナであり、シリアだとして、イランに対する締め付けを、大幅に緩和することになる、ということであろう。そうなると、イランに向けて、欧米のビジネスマンが、いまにもまして殺到する、ということになろう。