今日でエジプトの新大統領選挙の投票が終わる。昨日と今日の二日に渡る投票は、誰もが予想する通りシーシ大統領候補の、大勝利に終わるだろう。従って選挙結果に対する、特別な興味はない。ただ、その獲得票数の割合が、80パーセント台なのか、あるいは90パーセント台なのかということについては、多少の興味がある。
90パーセント台という数字が出てくれば、世間からはしかるべき力が働いた選挙結果だ、と非難の声が出てこよう。しかし、それは必ずしも正確ではなかろう。社会的混乱と経済的不信が続くエジプトでは、多くの庶民が誰でもいいから、力のある者に大統領になってもらい、社会を安定させてほしい、経済を良くしてほしい、という願望が強いだろう。
そう考えるとサッバーヒ候補では無理で、軍人上がりのシーシ候補の方が適役、ということになろう。したがって、シーシ候補が90パーセント台の得票をしても、何ら不思議でもないし、不正があったとも言い切れまい。
問題はその後の方にある。選挙が終わりシーシ候補の当選が発表され、首相が指名され、新組閣が始まり、新しいエジプト政府が動き出す、ということになるのだが、その政府が機能的に、動けるのかということだ。
エジプトは革命の前の段階から、対外債務を抱えて成り立ってきた国家だし、湾岸諸国などからの援助があって、成り立ってきた国家だ。つまり、経済的には相当厳しい状況に、あったということだ。8000万人を超える人口を抱えて、政府は国民に食糧を、与えなければならなかったのだ。
選挙結果が出る前に、エジプトの財務省は現状を明かしている。そのデータによればGDPに対し、国家予算は12パーセントも、不足しているということだ。教育費、厚生費、最低賃金への支援など、新たに確実に増加していく、支出が目立っている。
それに対して、エジプトが期待できる国家収入は、スエズ運河の通過料、外国からの出稼ぎ者送金、ガス資源、観光収入などであろう。石油を始めとする地下資源開発に、外国の企業が進出してくることを、期待しているが、なかなか本格的なものには、なっていないようだ。
つまり、シーシ大統領体制が誕生しても、エジプトの経済状態が急速に改善されることは、無いということだ。シーシ大統領が最初に手掛けるのは、治安維持であろう。それなしには、観光客も外国人ビジネスマンも、来てくれないからだ。シーシ大統領が立候補に際して、治安維持に力を入れると語ったのはそのためだ。当分の間はシーシ大統領の剛腕を、黙認しべきではないのか。