リビアではいま、イスラム原理主義テロリストたちが、各地で跋扈しているが、リビア軍は彼らを押さえ込むことが、出来ないでいる。つまりリビア軍はまともに機能できないでいるということだ。
無理も無かろう、カダフィ大佐の置き土産の武器が、リビア各地に隠匿されていて、それが部族や政治組織、イスラム原理組織などによって持ち出され、使われているのだ。
リビア議会の議事堂に、突然機関銃を持った若者たちが侵入し、発砲しながら自分たちの要求を叫ぶ、言うことを聞かない政治家や軍人、治安部の人たちが、暗殺の標的となっているのだ。
この無法地帯のようになってしまったリビアを、ハフタル将軍が元通りの治安が維持された国にする、と立ち上がった。彼はカダフィ時代の上級将校でチャドに派兵され司令官になったが、その後、アメリカに20年ほど滞在していた。
当然のことながら、ハフタル将軍を支持する声は次第にリビア全土に広がっている。まさに地獄に仏といった感じなのであろう。彼ならば混沌とした状態にあるリビアを、再生させることが出来る、という期待感が広がり、幾つものグループが彼のグループに参加する、と言い出している。
ハフタル将軍は彼のミリシア部隊を『リビア国民軍』と呼んでいる。それはある意味で正しいといえよう。2011年にベンガジで始まった反カダフィ革命の折に結成された、リビア国民軍はユーニス将軍に率いられていたが、後にフタル将軍が裏で動いて、ユーニス将軍を暗殺されたと言われている。
ユーニス将軍の後を継いだのがハフタル将軍だったから、リビア国民軍と呼ぶのは理にかなっている、ということが言えよう。ただハフタル将軍はその後、外国の情報機関との関係や、不明な点が多かったことから、革命政府の中で疑問が広がり、一時期雲隠れして、政治の舞台から消えていた。
このハフタル将軍とは、どんな人物なのであろうか。知名度とリビア国内での影響力が増してくると、やはりどのような過去があるかを、調べてみる必要が出てくる。
彼は先にも書いたように、カダフィ大佐の命令でチャドに侵攻したが、国際非難を受けたカダフィ大佐は『リビア軍はチャドにはいない』とハフタル将軍の部隊の存在を否定した。また、このリビア軍がチャド軍に敗北して、捕虜になったことも、ハフタル将軍がカダフィ大佐の逆鱗を買った、原因の一つだと言われている。
その後、ハフタル将軍はチャドからアメリカに渡り、反カダフィ体制の革命組織、リビア国民救済戦線を設立したが、そのスポンサーはCIAだった、と言われている。
ハフタル将軍が20年に及ぶ滞米生活を過ごした場所は、ワシントンのCIA本部に程近い、高級住宅街だったと伝えられている。そのそばには反カダフィ派の軍事訓練をする場所もあり、リビア人が参加していた、と言われている。
ハフタル将軍が今の時期に活動を始めたのは、アメリカの意向によるものだ、と考えるのが妥当であろう。もし、彼がリビア征圧に成功した場合、その後のリビアは安定するのだろうか。また彼が権力を握った場合、リビア国民の自由と暮らし向きは、どうなるのであろうか。あまり希望は持てそうに無いのだが。