エジプトの大衆がムバーラク体制を打倒する前、つまり2010年の段階では、エジプト・ポンドの対ドル・レートはほぼ5.4エジプト・ポンド前後で定着していた。それが革命後は、下げに下げ続けてきている。
エジプト中央銀行の公式レートは、つい最近まで7・015エジプト・ポンドだったものが、現在では7・15エジプト・ポンドに下がり、ドル買いは7・34エジプト・ポンドから7・60エジプト・ポンドにまで下がっている。
つい最近では、エジプト人金融評論家ワーイル・ジヤーダ氏が『近い将来1ドル8エジプト・ポンドまで下がるだろう。』と予測した。それは根拠の無い話ではなさそうだ。
この金融評論家は、エジプト・ポンドが下がる理由を、次のように説明している。『いまのところ湾岸諸国からの資金援助が、4~6ヶ月は続いているが、湾岸諸国からの資金援助が止まれば、対ドルで8エジプト・ポンドまで下げるだろう。大統領選挙はいい方に影響を与えてはいるが、それだけではエジプト・ポンドの価値を維持すには、十分ではない。既に中央銀行はエジプト・ポンドのレートを、調整できなくなっている。』
もう一人の金融専門家ヒシャーム・イブラーヒーム氏は『カタールに対する30億ドルの返済が今年末には待っている。加えて、パリ・クラブに対しても、7月までには7億ドルを、支払わなければならない。現在のような観光産業の不振と、外資導入不足の状況下では、エジプト政府が37億ドルの支払いを、果たすことは出来ないだろう。こうした状況下で、中央銀行は民間の両替業者から、ライセンスを取り上げざるを得なくなるだろう。』と語っている。
こうした悪材料に加え、6月24日からはラマダン(断食月)が始まる。そうなると食料を中心に、外国からの輸入が増え、ますますエジプト・ポンドは、下落するということだ。
そして、そのことはエジプト国内に、ハイパー・インフレを引き起こす、危険性があるということであろう。ラマダンになれば、各家庭の食料消費は1・5倍から2倍に増える。その食料のなかには、羊肉や牛肉を始めとし、お菓子類玩具。衣類なども含まれている。
シーシ氏が大統領に当選して、最初に手がけなければならない仕事は、どうやら湾岸諸国を歴訪して、資金援助と投資を依頼することのようだ。その場合、サウジアラビアを始めとする、湾岸諸国とイランとの関係が、緊張していれば、エジプトにとっては幸いであろう。