リビアのベンガジで、反カダフィ闘争が始まった早い段階で、ハフタルなる人物が登場した。彼はカダフィ政権下で軍の高官であったが、反旗を翻し、カダフィ大佐の下を離れた人物だ。
その後、彼は長い間アメリカに留まっていたが、リビアの革命が始まると帰国し、戦列に加わっていた。彼の人気はリビア国民の間では抜群だったのだが、その後政治家たちとのいざこざが絶えず、一旦は表舞台から降りていた。
その彼がここにきて、再度表舞台に登場し『リビア国民軍司令官』として、国内の安定に貢献する、と言い出した。彼を支持する者は多く、幾つかのグループは既に、彼の指揮下に加わる、と宣言している。
ハフタル将軍はリビア国内の、ムスリム同胞団をせん滅する、と公言しているが、それは決して容易ではあるまい。ただ、隣国エジプトでも、近くシーシ元国防大臣が大統領に当選し、ムスリム同胞団に対する徹底的なせん滅作戦を、展開するであろうから、両国間の対ムスリム同胞団協力作戦が、展開されるかもしれない。
しかし、そうなればリビア国内のムスリム同胞団は、徹底抗戦をするであろう。そうであることは、リビア人の多くが予測するところだ。そのためには、エジプト政府との協力が必要であり、エジプト国民の間には、リビアの国内問題に引き込まれたくはない、という考えも出てきている。
何故この時期にハフタルが、動き出したのであろうか。彼が動き出した裏には、アメリカとサウジアラビアの思惑が、働いているのではないのか。サウジアラビアは何度も説明したように、ムスリム同胞団を危険な組織と認定している。したがって、ハフタル将軍がムスリム同胞団のせん滅に立ち上がれば、資金的協力をすることは明らかであろう。
アメリカ軍の海兵隊がこの時期、リビアの近くに移動してきている。アメリカの海兵隊と航空機が、シシリ-島に集結し始めているのだ。そのことは、リビアでのハフタル将軍の戦闘を支援する意思を、表しているということであろう。
アメリカは反カダフィの革命が始まる前から、背後で反カダフィ派を支援していたし、カダフィ大佐が逃げるのを無人機で追跡していたし、攻撃を加えてもいた。最終的には反カダフィ派が、彼を捕まえるまで支援していたのだ。
この時期のハフタル将軍の登場は、アメリカによるリビア対応が、最終段階を迎えた、ということなのかもしれない。その後のリビアは、アメリカの強い影響を受ける、ということであろう。