カタールは湾岸諸国のなかにあって、唯一ムスリム同胞団の聖域となってきていた。エジプト人を始めとする、アラブの多くのムスリム同胞団員が、この国に居住できていたのだ。
しかし、サウジアラビアやアラブ首長国連邦との関係がこじれ、湾岸諸国の間で、孤立状態に追い込まれたカタールは、遂に自国内のムスリム同胞団員を追放する決定を下した。一部の者は既にカタールから出国しているし、ムスリム同胞団の幹部も、追放を待つ状態にある。例えばマハムード・フセイン事務局長や、ガマールヘシュマト、バッサーム・カファギ氏らがそれだ。
カタールはこれまで何をしたのか。カタールはサウジアラビアやエジプトなどの反政府ムスリム同胞団員を受け入れ、匿い支援していたのだ。つまり、これらの国々にとってカタールの行動は、明らかに敵対的だったということだ。
そのため、サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、さる3月にカタールから、大使を召還していた。そして、カタール政府の行動は明らかな内政干渉だとして、非難していた。
ムスリム同胞団の幹部を含むカタールからの追放劇のなかで、気になるのはユーセフ・カルダーウイ師に対する処遇だ。彼は世界イスラム学者会議の議長でもあり、一目も二目も置かれる人物だけに、彼に対する処遇はそう簡単ではあるまい。
アルジェリア政府はモーリタニアかモロッコに、追放することをカタール政府に提案したようだが、両国の治安状態はユーセフ・カルダーウイ氏の身の安全を保証できない、ということのようだ。結果的に、アルジェリアが受け入れることに、なるかもしれない。
しかし、その場合アルジェリア政府は、何処までユーセフ・カルダーウイ師の自由を認めるか、ということが次の課題になろう。彼はいまだに多くのムスリムに、影響を与えうる人物であるだけに、自由な発言を許すわけには行くまい。
いま言われているのは、アルジェリア政府はユーセフ・カルダーウイ師に対して、政治的関与を一切認めないということのようだ。つまり、政治がらみの発言は、一切許さないということであろう。
ユーセフ・カルダーウイ師がカタール政府によって、与えられていた特典は消えよう。それはカタールのアルジャズイーラ・テレビを通じて行っていた、イスラム説法が出来なくなるということだ。これは彼の存在そのものが消えることと同じであろう。