『シーシ立候補後初のテレビ・インタビュー』

2014年5月 6日

 

 来る52627日には、エジプトで大統領選挙が、行われる予定になっている。その結果は、61日には明らかになる予定だ。この選挙を前に、シーシ大統領候補が始めて、テレビ・インタビューに応じている。

 その中で彼が最も強調しているのは、ムスリム同胞団撲滅だ。この組織がある限り、エジプトは国内が分裂し、不安定な状態が続く、と判断しているからであろう。事実、ムスリム同胞団は国家的な組織ではなく、国際的な組織の特徴を、持っている。

 ムスリム同胞団とは、一国の中で変革を起こして、その中に留まるのではなく、アラブ世界全体に革命を起こし、イスラム体制を作り上げることを、最終目的としているのだ。そのためには、本部がエジプトであっても、サウジアラビアのリヤドであっても、シリアであってもかまわない、ということなのだ。

 これまで、国際的なムスリム同胞団組織の幹部構成は、エジプト国民に限らず、他のアラブのムスリム同胞団員も、含まれているといわれている。具体的に言えば、ガザのハマースのリーダーであるハニヤ首相は、ムスリム同胞団の幹部序列では、上位に位置していると言われている。

いままでは、エジプト人のムハンマド・バデーウ師をトップに、次いでエジプト人のシャーテル氏と言われていたが、ガザに居住するパレスチナ人のハニヤ氏がナンバー2ともナンバー3とも言われている。そのことの真相は分かりようが無い。まさにムスリム同胞団のトップ・シークレットなのだから。

こうしたムスリム同胞団の考えでは、エジプトのムスリム同胞団が、ガザのムスリム同胞団と連携して、エジプトに攻撃をかけることもやってきているが、何の矛盾も感じていないのであろう。シナイ半島でエジプト人の警察や軍人がテロに会い、死亡しているのはそのためなのだ。

現在選挙を前に、エジプト国内ではシーシ大統領候補の当選を、阻止しようとして、ムスリム同胞団が各種の組織を創り、テロ攻撃をさせている。もちろん、ムスリム同胞団はそれらの組織とは、関係無いと言っているが、ほぼ間違いあるまい。

ムスリム同胞団がエジプトで、再度権力を握るようなことになれば、エジプトばかりではなく、リビアもサウジアラビアも、アラブ首長国連邦もクウエイトも、危険な状態に追い込まれよう。現在ムスリム同胞団を支援しているカタールの王制も、やがてはムスリム同胞団によって、打倒される標的となる危険性があるのだ。

そのことをサウジアラビアやアラブ首長国連邦、そしてクウエイトはよく分かっているから、シーシ大統領候補の当選に向け、全面的な支援をしているのだ。リビアではいま戦闘状態が続いているが、その裏にはムスリム同胞団の、絶対的な力が存在するのだ。リビアで起こっているテロ事件は、部族間の問題だけではなく、ムスリム同胞団に対するリビア人の幾つかの組織の、戦いでもあるのだ。

シーシ大統領候補が大統領選挙を前に行ったテレビ・インタビューの中で、彼に対する2度の暗殺未遂事件を明かすと同時に、ムスリム同胞団の撲滅を語ったのはそのためだ。

アラブ全体を危険に陥れるムスリム同胞団を、いまだにアメリカは危険な組織とは認識していない、とエジプト外相は訪米後に不満を述べている。