5月の末に選挙が行われ、6月1日には選挙結果が発表されることになっている、エジプトの大統領選挙は既に選挙戦が、戦われ始めている。あるいは、もっと早い段階から、始まっていたとも言えよう。
シーシ大統領候補は立候補宣言を、だいぶ遅らせてきたが、それは彼が国民多数の要望に応えて立候補する、という形を取りたかったからだ。エジプト国内にはこのため、シーシ・グッズが売られ、大型のポスターが張られた。
何故シーシ大統領候補はこうも、国民の要望にこだわったのであろうか。そうしなくても、彼の大統領当選は誰の目にも、明らかだったはずだ。
実はそこがポイントなのだ。彼が立候補すれば彼に有利な選挙戦が戦われ、マスコミも官僚も全てが、彼の味方をすることは明らかだった.だからこそシーシ大統領候補は、国民の要望が高まった段階で、それに応えるかたちで立候補することを、決めていたのだ。現在既に大統領立候補者の締め切りを過ぎ、立候補者はシーシ元国防大臣とサッバーヒ・ナセル党党首の、一騎打ちとなった。
現在のエジプトは、ムスリム同胞団によるテロが続いており、選挙の投票にも影響が出るかもしれない。毎日のように爆弾騒ぎが続いているのだ。そうした中では、少しの隙も敵に見せるわけには行かない、というのがシーシ大統領候補の考えであったろう。
エジプトはいま、ムスリム同胞団による反政府運動と彼らによるテロ、そして経済苦という難問を抱えている。この苦境は国民を追い詰めており、何とか国を立て直さなければなるまい。それはたとえ、サッバーヒ大統領候補が当選しても、同じであろう。
そもそも、サッバーヒ氏の大統領選挙立候補は、シーシ大統領候補が正式に対抗馬を迎えて、選挙に挑み勝利した、という形にするためだったのではないかと思える。つまり、サッバーヒ候補は愛国心からの立候補であり、初めから大統領になることは、目的としていなかったのではなかろうか。
そのシーシ大統領候補がジャーナリストを前に、やっと口を開いて本音を語った。彼は現在のエジプトが、極めて危険な状況にあることを指摘し、国民が一丸となって戦わなければ、国家が崩壊し二度と立ち直ることは出来ない、と語ったのだ。
彼は『エジプトは40年以上も前から、分裂主義者たちが存在し、国家を分断しようとしてきている。宗教を語る者たちが、国家を分裂させようとしてきたのだ。彼らの手に国家が落ちた場合、二度と立ち直ることは出来まい。私は国民の要請があったから立候補したのであり、個人的な希望によるものではない。
国民を守ることは、国家を守ることに通じる。我々は大統領府、国家機関、マスメデイアと、手を組んで話し合っていかなければならない。』と語った。その通りであろう。