アメリカ軍が撤退した後、初のイラク選挙が実施された。その選挙を前に、イラク国内は度重なるテロで、混乱の中にあった。爆弾テロがイラク各地で起こり、相当数の犠牲者が出ている。
しかし、結果的にはマリキー首相側の勝利に収まる、という予測が出ているし、実際にそうなろう。ちなみに投票率は、60パーセントだと報告されている。
イラクの選挙がこれまでも危険ななかで、行われなければならなかったのは、何故であろうか。それは現在のマリキー政権が、イランと強い関係にあるためであろう。
アメリカはイラクの石油を始めとした、資源奪取を考えてイラク戦争を起こし、サダム体制を打倒したが、時間が経つにつれて、状況はイランに有利なものとなった。同じシーア派であるマリキー政権と、イラン政府は次第に関係を強化していったのだ。
そのことに腹を立てたのはアメリカであろう。2011年にイラクからアメリカ軍が完全撤退したが、再度の派兵はなかなか実現しにくいだろう。そこで使われたのが、サウジアラビアやカタールといった、スンニー派の湾岸金持ち国ではないのか。イラクには幾つもの国が、エージェントを送り出しているのだ。
サウジアラビアやカタールは、イラク国内のスンニー派集団に対し、資金を提供することにより、国内での対立を強めさせ、内乱状態に追い込もうとしている。イラクのマリキー首相はこれまで何度となく、サウジアラビアの関与を非難していているが、一向に収まりそうにない。
サウジアラビアがこうまでも、イラクの内政に関与するのは、アメリカの意向に合わせ、サウジアラビアとイランとの関係が、緊張していることにもよろう。今後イラクのマリキー政権が、一層イランとの関係を強化させ、サウジアラビアに対抗するようになれば、サウジアラビアは不安に追い込まれることになろう。
そのことに加え、サウジアラビア国内には新しい政治の流れが始まっており、体制内部に分裂と不安定化が、起こってもいる。もし、今後イランやイラク政府が、サウジアラビアの反体制派に、直接手を下すようなことになれば、サウジアラビアの体制は極めて危険な状況に、追い込まれるということだ。
その不安を払しょくするために、サウジアラビア政府はアルカーイダとでも、イスラエルとでもダーイシュ(シリア・イラク・イスラム国組織)とでも、手を組むということだ。
しかし、その手法はサウジアラビアの保守派にとって、極めて不愉快なことであろうし、反体制派には政府非難の、最高の口実を与えることにもなろう。