『ISILがサウジアラビアとクウエイトをターゲットに』

2014年5月13日

 

イスラム原理主義戦闘組織のなかに、ISIL(イラク・シャームのイスラム国)という名の組織がある。最近その組織がサウジアラビアとクウエイトを、今後の攻撃目標に掲げた、という情報が伝わって来ている。

  ISILはイラクやシリアで戦闘を展開しているが、シリアでは主導権争いのためなのか、もう一つの過激派イスラム原理主義組織ヌスラと、たびたび衝突を起こし、双方に多数の死傷者が出ている。

  こうした現状に、アルカーイダのアイマン・ザワーヒリ師は嫌気がさしたのであろうか、ISILに対し、イラクでの戦闘に専念することと、ヌスラとの戦闘行動を慎むよう呼びかけた。もちろん、対抗するヌスラに対しても、行動を慎むよう呼びかけている。

  問題は、このアアイマンザワ―ヒリ師の発言に、ISIL が真っ向から反発したことだ。いわくISILはアルカーイダの指揮命令下にはないとし、逆にアイマン・ザワーヒリ師に対し、誤った判断を改めるべきだと語っている。

  このことは、アルカーイダのアイマン・ザワーヒリ師が少なくとも、ISILに対しては指導力を失った、ということであろう。そうなると、これまでサウジアラビアやクウエイトに対しては、攻撃しないというスタンスが、崩れることになろう。

  既に、サウジアラビアやクウエイトのイマームたちが、外部で暗殺の対象になっているのだ。それはアルカーイダに流れ込む、援助資金に影響を及ぼすことになるのではないのか。

  これまでアルカーイダは、サウジアラビアやクウエイトなどの湾岸諸国と、イラン、リビア、パキスタンなどでの、戦闘活動をしないよう、指示してきたと伝えられている。

  今回ISILがサウジアラビアやクウエイトを、正式に攻撃対象にしたことは、今後大きな不安を世界に与えるものとなろう。述べるまでもなく、サウジアラビアやクウエイトは大石油産出国であり、それらの国の内奥が不安定かつ危険なものとなれば、石油の安定的共有に問題が生じてくるからだ。

  加えて、アルカーイダの指導力が弱体化し、ISILがヌスラと関係を強化して、サウジアラビアやクウエイトに攻撃を仕掛けるようになれば、ますます危険喉の度を増すことになろう。

この変化をアルカーイダの指導力が低下した、やがてはアルカーイダも存在しえなくなろう、という期待を持つことも出来ないではないが、それに至るまでには、まだ当分時間がかかろう。