6月後半にシリアでは内戦をついて、大統領選挙が実施されることが、決まっている。これまでの大統領選挙では、大統領が立候補し彼が当選する、というパターンだったのだが、今回は在野の人物が大統領選挙に立候補する、と名乗り出ている。
彼の名はマーヘル・ハッジャールで、アレッポで1968年に生まれ、弁護士を務めている。彼はシリア共産党のメンバーであったが、その後。カドリー・ジャミール氏が党首の人民希望党のメンバーになった。しかし、この人民希望党はその後解散され、カドリー・ジャミール党首はモスクワに移住した。
現在シリア政府は60パーセントの地域と、40パーセントの人口を支配下においている、と言われているが、多数が国外に難民で逃れている以上、それが関の山であろう。
大統領候補はシリア国籍であり、10年間シリア国内に居住していることが、条件とされており、反シリア各派の代表が大統領選挙に立候補することは、実質的に不可能になっている。
もう一つ大統領候補に立候補する条件には国会議員250人の中から、35人以上の支持者がいることが条件となっている。果たして、マーヘル・ハッジャール氏の立候補に、どれだけの賛同者が集まるか見ものだ。
さて、このマーヘル・ハッジャール弁護士が、果たして本当に独自の意思で立候補し、アサド大統領に挑戦するのか。あるいは、アサド大統領の再選を民主的な手続きを経た結果の当選である、とするための飾り候補でしかないのか、いまの段階では何とも言えない。
常識的に考えれば、マーヘル・ハッジャール氏の立候補は、シリア政府の画策の結果ではないかと思われる。そうでなければ、彼が暗殺される可能性が高いからだ。とてものんびりと選挙運動をしている余裕はあるまい。
マーヘル・ハッジャール氏があくまでも独立で、シリアの民主化のために立ち上がり、大統領選挙に立候補したのであれば、その勇気をたたえてあげるべきであろう。彼があくまでも独立の候補であり、政府のひも付きではないとういうことが、明らかになるのは大統領当選後か、あるいは敗戦後のアサド大統領の彼に対する処遇によって、明らかになるのではないか。
政府はアサド大統領を選挙で当選させ、新たに7年間の大統領期間を与えようが、その際、アサド大統領が次点のマーヘル・ハッジャール氏を、副大統領なり首相職に就任するよう働きかければ、出来レースであった、ということになろう。対外的なことを考え、アサド体制が今回、複数の大統領候補を立てて、選挙に挑むことは十分推測出来るからだ。