中東で起こっていることは、不明なことがあまりにも多すぎる。私を含む中東専門家と称する人たちには、ほとんど中東で起こっていることの裏側は、見えていないのかもしれない。
一昨年9月に起こった、リビアの東部都市ベンガジにある、アメリカ領事館襲撃事件と、アメリカ大使の死亡事件や、やはり昨年起こったシリアの化学兵器使用事件については、あまり明確なことは、分かっていないだろう。
しかし、そうした不明な事件についても、時間が経過すると、明らかになってくる部分もある。そもそも、ベンガジのアメリカ領事館襲撃事件には、シリア内戦が絡んでいたというのだ。
カダフィ大佐が買い集めた武器を、シリアの反体制側に与えることによって、一気にアサド体制を打倒しようという考えが、アメリカやイギリス、トルコ、サウジアラビア、カタールなどの間にあったようだ。
トルコの情報機関MITと、シリアのヌスラ・グループが協力して、昨年8月21日に起こった、ダマスカス近郊での化学兵器使用による、一般市民に対する攻撃が行われたということも、明らかになってきている。
この作戦にはエルドアン首相が、直接的にかかわっていたようだ。専門家に言わせると、ヌスラ・グループのメンバーには、サリン・ガスを使用する能力は無く、トルコの情報機関のスタッフが、作戦を実行したという結論だ。
こうした情報を入手していると、未だにイギリスのMI-6が健在であり、MI-6とアメリカのCIAとの協力が、スムーズに行われていることが分かってくる。そう考えると、アメリカの没落やイギリスの実質破産というニュースは、表面的なものに過ぎないのではないか、と思えるのだが。
あるいは逆に、アメリカやイギリスの経済状況が、だいぶ悪化しているために、両国はなりふり構わず、自国の利益を確保しよう、としているのかもしれない。
ウクライナ問題では、ロシア一国だけが悪者という報道が、日本国内ではあふれているが、過去の東欧諸国やアラブ諸国で起こった、争乱と革命を考えると、一概にロシアだけが悪者だとする説は、取り難いのではないのかと思える。