ムスリム同胞団政権下で外交担当副大統領を勤め、以前はIAEAの事務局長を務めた、ムハンマド・エルバラダイ氏が、エジプトの高等委員会(政府に対し法的助言をする機関)によって、国籍剥奪の提案が出されている。
高等委員会によれば、ムハンマド・エルバラダイ氏は二重国籍を有しており、そのような人物がエジプトの副大統領職にあったことは、法律違反だという非難は、だいぶ前からあった。ムハンマド・エルバラダイ氏は二重国籍保持者であることを、公にはしていなかったような気がする。
高等委員会によれば、ムハンマド・エルバラダイ氏はエジプト国民と、エジプト軍を愚弄したということが、国籍剥奪のポイントのようだ。
前のモルシー政権の末期に、ムハンマド・エルバラダイ氏はさっさと辞任し、外国に逃避することによって、彼の身の安全を確保している。これはまさにエジプト国民、なかでもムスリム同胞団支持者たちにとっては、明らかな裏切り行為であろう。
ムハンマド・エルバラダイ氏については、以前からあまり評判がよくなかった。大統領になろうとしたのも、モルシー政権下で副大統領に就任したのも、単に彼の権力欲と名誉欲を、満足させるだけのものであり、エジプト国家を考えてのことではなかった。
ここに来てシーシ政権が誕生するに先立ち、現体制ができるだけ多くのエジプトの問題を、処理してしまい、シーシ新大統領にはなるべく問題を軽減してから、大統領に就任して欲しい、ということかもしれない。
ただ、ムハンマド・エルバラダイ氏は国際的にも、著名であることから、もし、実際に彼のエジプト国籍が、剥奪されるようなことがあれば、エジプト政府に対する、国際的な非難は免れまい。
そのことは、ムハンマド・エルバラダイ氏の国籍剥奪が、現政権下で決定されたとしても、シーシ新大統領の政府にも、少なからぬ影響を、及ぼすものと思われる。従って、今回の件は、シーシ氏が新大統領に就任した際に発表されるであろう、幾つかの恩赦特赦の対象の一つなのかもしれない。