過去に22年にも渡って、駐米サウジアラビア大使職を務めた、サウジアラビアのバンダル王子はその後帰国して、情報長官という要職に就いていた。その職は、国内はもとより、サウジアラビアが外国で展開する、秘密工作も管轄する部署である。
バンダル王子が最近、世界の耳目を集めたのは、彼が情報長官職にあって、シリアに反政府テロリストを、大量に送り込んだことであろう。サウジアラビア政府はシリアの内戦に、直接的なかかわりを持ち、強い関与をしていた。
シリアの反政府派が使用する武器は、サウジアラビアとカタールが供与し、テロリストたちに給与を、支払っていたのも両国あった。そればかりか、サウジアラビア政府は化学兵器を外国から輸入し、反政府派テロリストたちに渡してもいたようだ。
そのすべてを取り仕切っていたのは、バンダル情報長官だったわけだが、反政府派のテロリストによる、蛮行が目立ち始めると、彼はその職から離れ、数カ月療養という名目で、サウジアラビアから離れていた。
最近になって、バンダル王子が姿を現すと、彼は療養先でアラブ各国の要人たちと、会談を重ねていたことが明らかになった。その後、バンダル王子は再度情報長官のポストに、復帰したようだ。
バンダル王子が情報長官のポストから外れた後、シリアでは反政府派のテロリストたちに、資金や武器があまり渡らなくなったためか、シリア軍の攻勢の前に、反政府テロリストたちの、退却するシーンが増えていた。
今回の、バンダル王子の情報長官職への復帰は、サウジアラビア政府が再度、シリアの反体制派を支援し、かつ強化するということであろうか。
他方、アメリカが最近になって、シリアの反体制テロリスト側に、高度な武器を渡したという、情報も流れている。それは対空砲であり対戦車砲などだ。これが本当に反政府側に手渡されたのであれば、反政府側はシリア空軍の空爆から身を守ることができ、戦況は一変するかもしれない。
シリア軍側は、最近になって樽爆弾なるものを開発し、市民の居住地にも落としており、その被害は甚大だ。そうした状況下では、アメリカが反政府側に対空砲を供与することは、国際的にあまり問題を生み出さないだろうと思われる。
いま考えなければならないことは、アメリカがシリアに対し、再度攻勢に出た、と受け止めるべきなのか、あるいは、そのように振る舞うことにより、シリアのアサド体制に、圧力をかけるだけなのかの、判断を下すことだ。
今回の変化は、アメリカによるシリアに対する、単なる圧力と受け止めたいのだが、その判断は甘いだろうか。