『世界には2・5人しかリーダーがいない。それはロシアのプーチン大統領であり、アメリカのオバマ大統領であり、そしてトルコのエルドアン首相だ。私はエルドアン首相が死ねと言えば、喜んで死のう。』最近そう語ったのは、エルドアン首相によって昨年7月に、経済顧問に指名されたユルト・ブルト氏だ。
彼はEUとトルコとの関係について、思い切った発言をしている。『トルコは最早、ヨーロッパとの関係を必要としない。西側を代表しているのはアメリカであって、ヨーロッパが独自の力を持っているわけではない。』とも語ったのだ。
彼によれば現在の世界はアメリカとトルコ・ロシア・ユーラシア・中東と、中国、インド、イランだけによって動かされている。というのだ。そのような国際状況の中では、ヨーロッパは何の価値もない、ということのようだ。
ユルト・ブルト氏がこうまでも、ヨーロッパを非難する発言をしたのは、実は金融問題に原因があるようだ。トルコの通貨リラは、大幅に交換レートを下げており、一時期1ドルに対して1・65リラ程度だったものが、現在では1ドルに対し2・3リラ程度まで下がっている。
このトル・コリラの大幅な下落の原因は、ヨーロッパの金融機関によるものだ、というのが彼の指摘したいところであろう。トルコ・リラの下落は、トルコ国内でインフレ傾向を生み出し、金利は7・25パーセントから、10パーセントにまで上昇している。
このトルコ・リラの下落とほぼ同じ時期に、イスタンブールのゲジ公園再開発に反対する、市民デモが6月に起こったことから、エルドアン政府はヨーロッパの金融機関による、トルコに対する破壊工作であったとみているようだ。
加えて、ヨーロッパ諸国のしかるべき機関と、トルコ国内の反政府組織が、エルドアン首相を抹殺する工作を進めている、とも考えているようだ。その顕われが、エルドアン首相と彼の内閣、家族の関する、収賄スキャンダル事件だ、というのだ。
エルドアン首相やユルト・ブルト氏が考えているように、ヨーロッパの金融機関がトルコの経済に、ダメージを与えていることは、事実であろう。しかし、それはヨーロッパから流れ込んでいた、ホット・マネーによるものであり、ホット・マネーは利益の無いところには、留まらないのが常識だ。
この発言は彼の感情の、爆発であろうと思われる。トルコはいまだに、ヨーロッパとの関係を、必要としているのではないのか。ヨーロッパには何百万人という、トルコ人が居住してもいるのだから。