トルコの地方選挙は、与党AKPの勝利と報告されている。事実はその通りであろう、それは野党側の結束が、弱かったことに一因があろう。
そのことの前に、汚職で非難の矢表に立たされていた、エルドアン首相と与党AKPは、何としてもこの選挙に勝利しなければ、野党になり下がり、結果的に刑務所送りになりかねない、という強い不安感があったろう。
このため与党AKPは、トルコ国内のほとんどのテレビ新聞に圧力をかけ、与党支持の報道を強要した。加えて、反与党のジャーナリストを、マスコミ各社から追放させる、という手段もとった。
そのうえで、ツイッターの通信を禁止してもいる。このエルドアン政府によるツイッター禁止措置は、欧米各国 から非難されている。ツイッターを通じて、エルドアン首相と彼の閣僚の、汚職ニュースが流されたことや、国会に野党が持ち込んだ、エルドアン首相と彼の子息ビラールとの、賄賂の隠匿会話などが、全国的に広まったからだ。
それだけではエルドアン首相の不安を、取り去れなかったようだ。選挙の投票が済み、票計算を始めた段階で、全国的に停電が起こり、票計算に手間取っている。加えて2人が暗殺されてもいるのだ。
これでは誰が考えても、選挙に不正があったという、疑惑を抱くであろう。事実、ヤロワ県では与野党が選挙結果に異議を申し立て、票の再計算が行われた。結果は、当初の与党AKP候補の勝利ではなく、野党CHP の候補の勝利となっている。
このヤロワ県の例は、他の県でも持ち上がってこよう。もちろん、与党AKPは票の再計算を、させないように動くだろう。しかし、首都のアンカラでは、選挙結果に対する不満が、野党側から既に出ている。
ツイッター禁止に対する不満だけではなく、トルコ国内では、何故アメリカのオバマ大統領は、エルドアン首相に対する厳しい対応をしないのか、という不満が持ち上がってきている。
野党MHPの党首は『泥棒には大統領になる資格はない。』と手厳しくエルドアン首相非難をしているし、野党CHPの党首は国会で、与党AKP の議員に殴打される、という事件も起こっている。つまり誰もが熱くなっているということだ。
検察、警察、裁判所など、すべての正義と公正を守る機関が、エルドアン首相によってズタズタにされ、彼の思い通りにしか動かないようになっているが、そのエルドアン首相の措置が、今後のトルコを安定させていくとは思えない。
選挙後のトルコ国内は、一見穏やかで普通の状態に、復帰しているように見えるのだが、マグマが地下では増大しているのではないか。その最大の危険はトルコ経済の今後の状況の変化によるであろう。トルコ経済はいま、下降線をたどっている。