最近ちょくちょく、カタールのアルジャズイーラTV番組が、消されているようだ。今回の番組は、コロンビア大学のジョセフ・マッサド教授のものだった。内容はパレスチナ内部の権力闘争と、アラブ、アメリカ、イスラエルの関与であったようだ。
アルジャズイーラ・テレビの番組は消されたものの、その内容のサマリーは別の場所に掲載された。その記事によれば、パレスチナの情報部員2万人がイスラエルやCIAのために、スパイとして働いていたということのようだが、その元締めとなっていたのは、ガザ地区の治安責任者であったムハンマド・ダハラーン氏だったというのだ。
彼はガザの税収の40パーセントを着服しており、ハマースとファタハの双方からは、イスラエルとアメリカ、エジプトとヨルダンの情報部のエージェントとみなされていた。アメリカは2007年にハマースがガザで権力を握ると、ハマースを倒す工作をしていたようだ。
ムハンマド・ダハラーン氏はハマースに対してだけではなく、ヨルダン川西岸を支配している、マハムード・アッバース議長に対しても、彼のスポンサー諸国との間で、打倒工作を計画していた。
そもそも、アメリカはこのムハンマド・ダハラーンという人物を、アメリカにとって都合にいい人物としてとらえており、これまで何度となくマハムード・アッバース議長に対し、彼を副議長に任命するよう、圧力をかけていたようだ。
ムハンマド・ダハラーン氏はアメリカやイスラエルの意向を受け、ハマースやファタハの幹部暗殺も試みていた。ハマースのイスマイル・ハニヤ首相がターゲットであり、ファタハの幹部もそうだったようだ。
そのことにより犠牲になったのが、ドバイで2010年に起こったハマース幹部の暗殺事件だった。この暗殺劇にはモサドが関与しており、実行犯は2人のパレスチナ人だった。述べるまでもなく、彼等はムハンマド・ダハラーン氏の子飼いの、テロリストであったということだ。
ムハンマド・ダハラーン氏を危険人物と考えたマハムード・アッバース議長は、彼の地位をはく奪し、2010年にヨルダン川西岸地区から追放している。その後にムハンマド・ダハラーン氏は、ムバーラク大統領の統治する、エジプトに逃れている。ムバーラク大統領が失脚した後は、ドバイに移り住んでいる。
アメリカはなぜムハンマド・ダハラーン氏を、こうも擁護しているのであろうか。アメリカはハマースを完全に潰してしまいたい、と考えているようだ。そのために、ムハンマド・ダハラーン氏を使うということだ。同時にマハムード・アッバース議長を権力から外すうえでも、彼を必要としていた。
オバマ大統領はマハムード・アッバース議長を辞任させたいと考えており、その後にはムハンマド・ダハラーン氏が、後任となるというシナリオのようだ。この流れの中で、ムバーラク大統領と親しい関係にあったエジプトの財閥、バハガト氏の所有するテレビで、ムハンマド・ダハラーン氏はマハムード・アッバース議長を、激しく非難している。
エジプト政府は最近ムスリム同胞団を、非合法なテロ組織だと断定した。そしてガザのハマースに対しても、同じ見方をしている。何故ならば、ハマースはガザのムスリム同胞団が、結成した組織だからだ。
ムハンマド・ダハラーン氏は現在、ドバイに亡命しているが、彼にはアメリカ、イスラエル、エジプト、湾岸諸国がついているということだ。これらの国々は、ムハンマド・ダハラーンン氏に権力を握らせることによって、パレスチナ人すべてをコントロールしたい、と考えているのだ。
そしてその後に、パレスチナ側にイスラエルを、ユダヤ国家と認めることを始めとする、すべての妥協をさせ、これまで60年以上にも渡って、解決不可能だったイスラエル・パレスチナ問題を、解決したいということであろう。それはオバマ大統領が任期の終わりに当たって挙げる、偉大な成果となろうということだ。