長い間エジプト国民をやきもきさせていた、シーシ国防大臣の辞任が発表された。これは大統領選挙に立候補するにあたって、必要なステップあった。現役の公務員がそのまま、立候補することはできないからだ。
これまでシーシ国防大臣の立候補が、遅れていたことについては、いろんな噂が流れていた。例えば彼は意外に慎重であり、エジプトの大統領に就任した場合、アメリカによる暗殺の標的になることを、恐れているからだ、というものがあった。
また、そうではなくて混乱するエジプト経済を立て直し、民生を安定するのは至難の業であり、大統領に就任した場合、その責務を負わなければならないからだ、という説もあった。
加えて、国防大臣はエジプト経済の40パーセント以上を、牛耳っているのだから、そちらのトップに居続けた方が得なのだ、という説もあった。しかし、それらの憶測はみな外れていた。彼は国防大臣職から辞任した後にも、影響力を残せるよう、後任人事を固めることに、専念していたのだ。
その作業が完了したいま、シーシ国防大臣は辞職し、大統領選挙に参加すると宣言したのだ。彼の支持者の喜びようは大変なもののようで、与野党に関わらず、多くの著名人が彼の大統領選挙参加を歓迎している。
ムスリム同胞団の幹部は、シーシ氏が大統領になってもテロは無くならず、エジプト国内の混乱は続くと言っているが、それは彼らがそうする方針だ、ということを語ったのであろう。
しかし当分の間は突発的なテロがあったとしても、それ以上の混乱にエジプトを導くことは、ムスリム同胞団の能力では、出来ないのではないか。先にも書いたように、シーシ新大統領はムスリム同胞団の中の、穏健派を取り込み、ムスリム同胞団の切り崩しも、始めるであろう。
すでに述べてきたように、アラブ諸国は総じてシーシ氏の、エジプト大統領就任を歓迎している。湾岸諸国からは相当の金額が、流れ込んでこよう。そうなると、それを阻止するムスリム同胞団の動きは、国民の監視下に置かれるということであろう。
さて、このシーシ新大統領を誰が支えていくのか、ということになるが、多分アムル・ムーサ氏ではないかと思われる。彼はエジプトの外務大臣を長期にわたって務め、その後、アラブ連盟の事務総長にも就任している、したがって、彼の顔が広いのはアラブ世界だけではなく、世界全体であろう。