イスラエルのリーベルマン外相は、ガザ地区からのロケット弾攻撃が続いていることに、相当腹を立てたのであろう。それもそうであろう、以前は数日か一週間に1発程度だった、ガザ地区からのイスラエルに対するロケット弾攻撃が、最近では一日に30発も、撃ち込まれることがあるのだ。
我慢ができなくなったイスラエル側が、この前もガザ空爆を敢行したが、それでも止む気配はない。何時ロケット弾が飛んで来るか分からない恐怖のなかで、イスラエル南部のガザに近い地域に、住んでいる国民がいるのだ。
最近もう一つ、イスラエル側にとって脅威になっているのは、ガザ地区からイスラエルに抜ける、秘密のトンネルが発見されたことであろう。それも本格的なものであって、小さな口径のものではない。そこを通って、ガザのパレスチナ人ゲリラが、イスラエルを急襲したら、相当の死傷者がイスラエル側に出るであろう事は、容易に想像がつく。
こうした状況から、リーベルマン外相はガザを、再度占領下に置いたほうが安全だ、と言い出したのだ。しかし、それはガザに住むパレスチナ人と、ガザのパレスチナ政府に向けた脅しであり、実際に再占領が行われるとは考え難い。
他方、こうしたリーベルマン外相の発言に対し、ガザ地区のハニヤ首相は、ガザに手を出せばイスラエルが、相当ひどい仕返しを受けることになろう、と警告している。ガザにはハニヤ首相がコントロールしている、ハマース組織だけではなく、イスラム・ジハード組織などもあり、ハマースの力を持ってしても、コントロール出来ない状態にあるのだ。
もし、いまの段階でイスラエルがより本格的な、ガザ攻撃と軍事侵攻を行えば、ガザの住民は総員でこれに対抗することになろう。ガザの住民はそこまで、イスラエル側によって追い込まれているのだ。
加えて、エジプトのムスリム同胞団政府が、軍によって打倒されて以来、同じムスリム同胞団組織である、ハマースの統治するガザには、厳しい対応をしており、ガザ・エジプトの秘密トンネルは、1500本以上も閉鎖されてしまい、密輸から徴収していた税金が、ガザ政府には入らなくなってもいるのだ。
しかも、パレスチナ全体を代表する、パレスチナ自治政府は、ガザの惨状を無視し、イスラエルと結論の出ない、交渉という逃げを打ち続けている。ハニヤ首相がパレスチナ自治政府の、アッバース議長を怒鳴りたくなる気持ちは、分からないでもない。
アッバース議長が統治するヨルダン川西岸地区にも、相当数のハマース・シンパがいると言われているいま、ガザのハマースが全面戦争に打って出れば、ヨルダン川西岸地区にある入植地の、イスラエル人はきわめて危険な状況に、追い込まれ、遂にはイスラエル軍とパレスチナ・ゲリラとの、武力衝突に発展する可能性も否定できまい。その意味でハニヤ首相と、リーベルマン外相が発した言葉は、無視できない危険な兆候であろう。