イランの最高指導者であるハメネイ師が、世界を驚かせる発言をした。彼の発言の内容は、『ホロコーストは起こらなかった』という意味のものだった。彼は「ホロコーストは実際に起こったのかどうは不確かだ。もし起こったとしても、それはどう起こったのか、不確かなものだ。』という内容の発言をしたのだ。
この発言はハメネイ師のツイッターで流され、しかも、イランの新年であるノールーズの祝いの、マシャドの大衆の前で行った演説の中で、語られたものだ。加えて、彼は欧州諸国がこの問題で沈黙を守っており、真実を語ろうとしない、と苦言を呈している。
イランのノールーズの祝日に向けて、イスラエルからはペレス大統領が、祝意のメッセージを送った直後だっただけに、ハメネイ師の今回の発言には、首を傾げたくなるのだが。
考えられることは、最近のロウハーニイラン大統領に対する評価が、世界各国とイラン国内で、高くなってきていることであろう。彼の微笑外交は欧米諸国から歓迎されており、彼の側近であるザリフ外相もまた、EUを初めとした各国との間の、関係を改善している。
あるいは、ハメネイ師はロウハーニ大統領率いる、現在のイラン政府が西側との関係を大幅に改善し、成果を挙げることを、懸念しているのかもしれない。
イラン国民にとって喫緊の問題は、経済の改善であろう。その意味では、ロウハーニ大統領の対外政策は、成功していると認めざるを得まい。中国やロシアばかりではなく、ヨーロッパ諸国も、続々とイランに閣僚を送り込み、イランとの関係改善を図ろうとしているのだ。
アメリカの企業も、イランの市場に食指を伸ばしており、イラン詣でを始める機運に、なってきている。それが話だけではなく、現実のものであるために、アメリカ政府は『イランに対する経済制裁はまだ解除されていない。』と声高に叫ばなければならないほどだ。
このイランと欧米諸国との関係改善と、経済関係の促進への動きは、多分止まらないだろうと思われる。イランの持つ膨大なニーズが欧米諸国に、イランとの関係再開の時期が来た、と感じさせているからだ。
このままの流れで行けば、ロウハーニ大統領の評価は内外ともに高くなり、それに反して、ハメネイ師に対する評価は、下がっていくことになろう。
今回のハメネイ師のホロコースト否定発言は、ロウハーニ大統領の外交の邪魔をすることを意図したものであり、同時に、ロウハーニ大統領の行動に対する、警告なのであろう。しかし、イラン国民はハメネイ師よりも、ロウハーニ大統領を支持する方向に、傾いていくのではないか。
ハメネイ師の切り札である革命防衛隊も、大きな商談が動き出せば、一枚加わろうとするであろうから、ハメネイ師よりもロウハーニ大統領の方針を、支持するようになるかもしれない。