『エジプトは安定に向かっているのか』

2014年3月16日

 

 エジプトの経済状態は、湾岸諸国からの巨額の援助で、だいぶ改善に向かいつつあるようだ。サウジアラビアはエジプトがロシアから輸入する、兵器代金を肩代わりする、と発表している。

 幾つかの湾岸諸国からの、投資案件も出てきており、それに加え、シーシ国防大臣がアラブ首長国連邦との協力で、貧困者用住宅を多数建設する、ということも発表されている。

 エジプトの外貨準備が増え、株価も上昇傾向にある。つまり多くの分野で、エジプトは改善に向かっているということだが、問題はエジプトの経済発展の核心である、観光業がいまだに振るわないことだ。

 それはムスリム同胞団と、その系列のイスラム過激派組織による、テロ事件が続いているからであろう。観光業が復活しない限り、エジプトの大衆が経済改善を、実感することはできまい。

 ムスリム同胞団はまさに、この点を突いて攻めているのだ。ムスリム同胞団の資金が凍結されているいま,ムスリム同胞団が大規模なデモを、実施することはできない。そのために、テロ攻撃を活発化させているのであろう。

 最近では、兵士が乗るバスが攻撃され、兵士1人が死亡している。そのことに続いて、カイロのシュブラ・アルハイマ地区では、軍のチェック・ポイントに対する、爆弾テロが実行され、6人の兵士が犠牲になっている。

 もちろん、ムスリム同胞団はこれらのテロとは、何の関係もないと言っているが、以前シナイ半島で起こったテロでは、アンサール・ベイト・ル・マクデス組織が犯行声明を出している。

述べるまでもなく、アンサール・ベイト・ル・マクデス組織は、ムスリム同胞団の系列の組織だ。あるいはガザのハマースのような、スリム同胞団の別働隊なのかもしれない。

 ここに来て、ムスリム同胞団によるテロ活動が、活発化しているのは、述べるまでも無い、エジプトの大統領選挙が、近づいているからだ。シーシ国防大臣が大統領に選出されるのはほぼ確実だが、そうなれば、ムスリム同胞団への圧力が強化されようし、ムスリム同胞団の将来はほぼ無くなる、ということであろう。

 ムスリム同胞団によるテロが頻発している、カイロとエジプトを混乱に向かっていると判断するか、あるいはそうではなくて、ムスリム同胞団による最後のあがきであり、その後には安定の時が来る、と判断するのかは、きわめて困難というのが、一般的な評価であろう。しかし、私はあえて後者だと言いたい。