『愚かなエルドアン首相の発言が火に油を注ぐ』

2014年3月16日

 

 昨年の夏にイスタンブールのゲジ公園を、巨大なショッピング・モールにするという計画に反対する大衆デモが起こった。イスタンブールっ子にすれば、この計画は受け入れがたいことだったのだ。

 エルドアン首相が反対デモに対し、強権を発動したことで犠牲者が出た。このため反政府デモは瞬時にして、全国に広がっていった。

 その後は、昨年12月からエルドアン首相と彼の家族、閣僚とその家族に絡む汚職事件が、大きな社会問題となって、今日に至っている。エルドアン首相はこの汚職スキャンダルを隠蔽するために、多くの有能な検察幹部と、警察幹部を左遷した。そのことによって汚職事件の捜査を止めようとしたのだ。

 それだけでは自分の立場を守れない、と考えたエルドアン首相は、マスコミを弾圧し、自由な報道を差し止め、エルドアン支持の記事を書かせ、テレビにも報道させた。

 加えて、法権力の上により強い、法権力を有する組織を作ったのだ。それが検察警察最高委員会(HSYK)だった。トルコ国民はこうした不法を、法律化していくエルドアン首相の動きを、ギュル大統領が阻止してくれる、と期待したのだが、ギュル大統領は止めようとしなかった。

 つまり、トルコ国民の期待は全て消え去ってしまったのだ。政府に対する不信は与党に対する不信となり、3月末に行われる地方選挙で、決定的な与党敗北の結果が出るだろう、と予測されるようになった

 そうした反政府の機運が盛り上がっているなかで、不幸なことが起こった。昨年夏のゲジ公園をめぐる大規模デモが起こった際、エルドアン首相は力で抑え込んだわけだが、警察の強硬対応の中で、一人の少年が重傷を負っていた。

彼はパンを買いに出かけ、偶然デモ隊のそばを通り過ぎただけだったのだが、警察が放った催涙弾が彼の頭に命中し、意識のない状態になった。その少年が死亡したのだ。トルコ国民は少年の死亡で、警察とエルドアン首相に対する怒りを爆発させ、大規模デモを起こした。デモはトルコ中に広がったのだ。

エルドアン首相に対する抗議デモに対し、実に愚かな発言をエルドアン首相がしたのだ。その発言はトルコ国民の怒りの炎に、油を注ぐ結果となるだろう。エルドアン首相は警察の催涙弾が命中して、重体にあった少年が死亡すると『あの少年はテロリストのメンバーだった。』と言い訳をし、警察をかばい攻撃が正当だったという説明をしたのだ。犠牲になったその少年の名はベルキン・エルワン、たった14 歳だった。