アメリカのケリー国務長官が、外交委員会の席上で、シリアのアサド大統領を評価する発言をした。彼は『アサド大統領の対応は、以前に比べてよくなっている。しかし、それは安定的なものではないということだ。危機は軍事力では解決できない。』と語った。
ケリー国務長官がこの発言をした裏には、シリア難民問題が周辺諸国に、相当な重荷になってきている、ということがあるのであろう。例えばヨルダンの場合、90万人のシリア難民が入っていると言われるが、実質は100万人を超えているだろうと見られている。
シリア難民がアパートを借りるために、ヨルダンの家賃は上昇しているし、シリア難民が購入するために消費物資も値上がりしている。加えてシリア難民が生活を維持するために、あらゆる仕事に就こうと懸命になっているため、シリア難民に対する賃金は抑え込まれ、それがヨルダン国民の収入にも、影響を与えている。
アメリカは中東でイスラエルに次いで、信頼できるヨルダンの苦境を、放置できないだろう。そうなると、資金的な援助が頭に浮かぶのだが、アメリカにとっては相当苦しい台所事情であることから、ヨルダンが求める額を援助できるとは限らない。
そうしたアメリカの事情と周辺諸国の事情が、あるいは今回の発言を、ケリー国務長官にさせたのかもしれない。そのことは、アメリカが今後ますます話し合いによる、問題の解決にシフトしていく、ということであろう。
これまでシリアの内戦で、反政府派に支援を送っていた、サウジアラビアやカタールが、相当援助を減らしてきている、ということもあろう。
シリア問題を軍事力ではなく、話し合いで解決するとなれば、反政府派がまとまれるのか、誰が実際に一番影響力を持っているのか、ということを再度検討しなければなるまい。
アメリカがいい加減な代表を反政府派から立てて、シリア政府と交渉すれば、たちまちにして反政府は、内部で対立が起ころう。そうなれば有利なのは、アサド体制側ということになる。
もし、アメリカがアフガニスタンの、カルザイのような人物を代表に立てれば、汚職がはびこることになろうから、金銭的なトラブルが反政府派内部で、広がる可能性が高かろう。
アメリカはシリアへの介入で、完全に壁に突き当たったということであろうか。 最近のアメリカは雑なゲームを、やり過ぎているのかもしれない。