『チョット間の抜けたリビア石油密輸話』

2014年3月12日

 

 北朝鮮のモーニング・グローリー号という名の石油タンカーが、リビアの東部にあるシドラ湾の港に停泊していた。述べるまでもなく、リビアの原油を積み出すためだった。

 リビアの東部は未だに東部地域分離派が支配しており、リビアの中央政府に関係なく、石油の輸出をするということだ。石油地帯のほとんどがリビアの東部にあるために、東部地域は分離独立、少なくとも高度な自治権を獲得したいと考えて、中央政府に抵抗してきていた。

 今回の北朝鮮への原油輸出は、我慢できなくなった東部が、強行突破を図ったということであろう。モーニング・グローリー号には、およそ234000バーレルの原油が、積まれていたということだ。

 積み込みを終われば、タンカーは当然のこととして、シドラ湾を離れることになるが、リビア政府軍がこれを阻止しようと動いた。しかし、大型タンカーはそのリビア海軍の阻止網を抜けて、公海上に達したようだ。もちろん、、リビア政府は公海には至っていない、と言っているが多分嘘であろう。

 なぜこのような、間抜けなことが起こったのであろうか。リビア政府の説明のよれば、気候が悪く海が荒れていたために、小型の警備艇ぐらいでは、正常な活動ができなかったからだ、ということらしい。

 リビア政府は海軍だけではなく、空軍も阻止活動を行った、、つまり全力を尽くしたのだと説明している。この場合、まともな作戦を立てられる人物が、軍の中には居ないということと、軍人の訓練の度合いが低い事があげられよう。

 そもそも、リビア東部では昨年の8月以来、3つの主要な港が東部分離派によって、支配されてきていたということだ。その奪還作戦はどうなっていたのであろうか。東部分離派のミリシアが強いということであるとしても、基本的にはリビア軍が機能できていない、ということであろう。

 この密輸船の捕獲が出来なかったことは、リビアの国会で大問題になっている。当然であろう、リビアの国家収入のほとんどが、石油輸出に依存しているわけであり、今回のような東部のグループによる、勝手な石油輸出が今後も続けば、リビアでは東西の経済的アンバランスが起ころう。それは政治的不安定を増長することになるのは、目に見えている。

 このため、リビア国会はアリー・ゼイダーン首相を更迭し、臨時首相に国防大臣を充てることを決定した。アブドッラ―・アルシンニーがその人物だ。しかし、彼に国会はなぜ今回の捕獲作戦の責任を問わないのであろうか。そこにも部族間対立が、影を落としているということか。そうだとすると、リビアはまだまだ国家を、統一できないということか。