エジプトは2011年の革命以来、経済的にはどん底の状態を続けている。景気が悪いというのに、物価が上がり失業率は高まり、国民にとってはとんだ災難と言うところであろう。
実はそのことが、ムスリム同胞団のモルシー政権が打倒される、真因だったのではないのか。一部のムスリム同胞団支持者は別として、大半のエジプト国民は、ますます悪化していく経済と、イスラム色が濃くなっていくことに対する、不安を抱いていた。
それが昨年の6月30日デモ(第二革命)を起こし、次いで軍がムスリム同胞団と世俗派との衝突による、多数の死傷者が出ることを危惧して、蜂起したというのが、実際の流れであったろう。
そうであるとすれば、次期政権は経済の改善を、第一義としなければなるまい。臨時政府は公正と治安を、第一義とすると発表したが、庶民にしてみれば、治安の悪化は経済の悪化によって、生み出される現象だ、ということになろう。
そこで、エジプト再生に立ち上がったのが、アラブ首長国連邦であり、サウジアラビアであり、クウエイトだ。これらの国々はこぞって、エジプトへの経済支援を、約束している。
その甲斐あってか、エジプト・ポンドが少し持ち直しているし、エジプトの株式市場も、値を上げるようになってきた。やはり、さわやかな風が吹き始めた、あるいは、さわやかな風が吹き始めるだろう、という期待がエジプト国内に、広がっているのであろう。
そうしたことに加え、具体的な経済改善への話題がでてきた。ひとつはシーシ国防大臣が、大統領選挙前であるからであろうか、貧民層のための住宅建設計画を発表した。当然この計画が進められれば、就職の機会が増えるし、資材の調達や建設と、幅広い需要が発生しよう。
次いで出てきた話は、ドバイのフタイム財閥が、エジプトに大型投資をすることを決定したという話題だ。これは巨大なショッピング・モールをエジプト国内4か所に設置する、具体的な場所はカイロ、アレキサンドリア、ギザというもので、その投資金額は23億ドル、38000人の雇用を生むというものだ。
これ以外にも、フタイム財閥は32のハイパー・マーケットを、設立することを決めたようで、その投資金額は7億ドル、4500人の就業機会が生まれる、という見通しだということだ。
やっとエジプト庶民にも、アラブの春という革命ではなく、本当の意味での春が来るということであろうか、