イランはイスラム法によって国家を統治するイスラム国家だということは世界的によく知られている。しかし、どうもイランの世界におけるイメージは後進的なようだ。
女性がスカーフでホウかむりをし、長衣をまとって、できるだけ身体的特徴を、アピールできないようにしている。男性はしかるべき年齢に達すると、髭を伸ばすのが普通だが、どうもぼうぼう髭という感じで不潔だ。
しかし、こうしたことはイスラム法もさることながら、社会習慣をより厳しくした結果の場合も、あることを忘れてはなるまい。イスラム法を厳密に実行しようとすれば、いまイラン社会で見られるような傾向は、必ずしも出てこないと思えるからだ。
女性の服装や男性の髭については、それでも許される部分があるかもしれないが、犯罪者の処刑については、そうは言っていられない。イランでは公開処刑に処せられるのだ。そのことに対する非難の声が、イラン国内で上がり始めている。
イランの場合、死刑判決が下されるのは、麻薬取引に関わった場合、殺人を犯した場合、同性愛を行った場合、宗教を冒涜した場合、などとなっている。麻薬に関連する犯罪が多いのは、イランが世界最大の麻薬産出国である、アフガニスタンに隣接しており、欧米への麻薬密輸ルートの一つに、なっていることに起因しよう。
イランの法律では、女性や年少者に対しても、同じ法律が適用されているようだ。少年が誤って人を殺しても、それは処刑の対象になるのだ。ある例では、親が犠牲者の家族に5万ドルを支払って、何とか処刑を免れたというケースがあるようだが、こうなると貧しい者はそうは出来ないため、法の下の平等は成立しなくなるということだ。
イランは中国に次いで処刑の数が多い、と報告されているが、年間に処刑される犯罪者の数は、昨年の場合600人を超えたようだ。その処刑は公開処刑の場合と、刑務所内での非公開処刑とがあるようだ。
公開処刑の場合、広場に設置された台の上に、犯罪者が引き上げられ、クレーンに繋いだロープで、絞首刑にされるのだ。その光景は、折々インターネットで紹介されているが、数百人の見物者が集まるのが普通だということだ。
先日インターネットで公開されたケースでは、犯人が処刑されるにあたり、母親に会いたいと懇願するが、結果的には認められなかった。処刑台の上で暴れ叫ぶ犯人の姿は、何とも言えないものだった。