『パレスチナのハマースが窮地に』

2014年3月 5日

 

 パレスチナのガザに拠点を置く、ハマースがどうやら窮地に立たされたようだ。ハマースとはムスリム同胞団の別働隊として1980年代半ばに結成された組織だが、いまでは完全にガザを、コントロールするに至っている。

 このハマースはパレスチナ自治政府から、一部予算をもらっているようだが、それでは間に合わず、エジプトとの国境線に秘密のトンネルを百本以上も掘り、そのトンネルを通じての密貿易に、課税をしてきていた。

 これらの秘密トンネルを通じて、ガザには食料や医薬品、電気製品から車までもが、持ち込まれていたということだ。そしてリビアで革命が起こった後からは、リビアにある武器がこのトンネルを通じて、ガザ地区内に持ち込まれていたのだ。

それ以外にも、シナイ半島の北端にあるエルアリーシュ市は、他のアラブ諸国にリビアの武器を流す、武器取引の拠点となってきていた。それにはハマースが当然強くかかわってきていた。そのため、エジプト軍がこの秘密トンネルを、破壊する作業をし続けている。

 エジプトにはアラブの春革命後に、ムスリム同胞団による政権が誕生すると、ガザのムスリム同胞団であるハマースとは、緊密な関係になり、ハマースは自由に秘密トンネルを使った密貿易を行い、モルシー政権は過激なイスラム・テロリストをこの地域に潜らせた。つまり双方はガザ国境での自由を、享受していたということだ。

 しかし、その後、昨年7月のエジプト軍による蜂起(クーデター)で、ムスリム同胞団政権が打倒されると、ガザのハマースとエジプト政府との関係は、疎遠になるばかりか、敵対するようになった。

  ガザ地区の秘密トンネルを通って、シナイに潜入したパレスチナ人と、テロリストが連帯して、エジプトの国境警備隊に攻撃をかけ、多数の兵士が死亡している。そのハマースやハマースと連帯するメンバーと、エジプト軍との戦いはいまだに続いているのだ。

 このことに業を煮やしたエジプト政府と裁判所は、ハマースのエジプト国内での活動を、全面的に禁止する決定を下した。これは昨年の軍の蜂起以来続いている、エジプト国内でのテロ事件とも関連していよう。

 このエジプト政府の決定に対し、ハマース側は猛然と抗議し『イスラエルを利するものだ。』と噛みついている。しかし、これまでのハマースの行動こそ、責められるべきであろうと思われる。これで当分の間、エジプト政府はパレスチナ問題に、あまり熱意を示さなくなろう。