イラクのサダム・フセイン大統領の娘ラグダ女史が、カタールのアルジャズイーラ・テレビを非難した。彼女に言わせれば、アルジャズイーラ・テレビは完全に西側とイスラエルの政策に、則った内容のアラブ報道をしているのだというのだ。
アルジャズイーラの特派員たちは、アメリカの情報機関の方針に従って、番組を作っているということだ。そのラグダ女史の主張には、賛成できる部分もある。 これまでのアラブの春革命現場からの、アルジャズイーラの報道は反体制派を、全面的に支援する内容であり、体制側は悪と決め付けて報道していた。
現在内戦が続いているシリアの場合も、決してバッシャール・アサド体制の正しい部分を、評価しようとはしていない。以前、リビアのザーウイヤで反政府デモが起こっている時、アルジャズイーラ・テレビの特派員は、催涙弾を実弾と紹介したことがある。
ラグダ女史に言わせると、アルジャズイーラ・テレビはアラブ世界の、分裂と衰退を煽っている、ということになるようだ。加えて、スンニー派とシーア派の対立も煽り、それまでには存在しなかったような、スンニー派とシーア派の対立を生み出すことに、成功しているというのだ。
それ以外にも、ラグダ女史はカタールに居住している、エジプト人のムスリム同胞団メンバーの、イスラム学者カルダーウイ師についても、厳しい非難をしている。カルダーウイ師はシリアの内戦が始まった初期の段階で、ファトワ(宗教的裁定)を発し『シリアの戦闘で反政府派の戦列に加わることはジハードだ。』と語っているのだ。
この彼のファトワによって、多くのアラブの若者がシリアの反体制側の戦列に加わり、シリア国内をぼろぼろにしてしまっている。何百万人のシリア国民が難民として戦禍を逃れ、シリアから周辺諸国に移住している。
加えて、既に15万人ほどのシリア人が、戦闘に巻き込まれ、犠牲になっているのだ。ジハードの名の下に、シリア国内では反政府派の戦闘員たちが、残虐極まりない手法で人を殺害してもいる。
イラクの場合にも、アルジャズイーラの報道があまりにも、反サダム的内容であったことを踏まえ、同じ手法の報道がシリアの場合にも、用いられていることに、ラグダ女史は我慢が出来なかったのであろう。
この彼女の発言を、単なる女性の感情論として、受け止めるべきではあるまい。シリアの国内で起こっている現実を、より正確に把握する必要があるのではないのか。