イランとサウジアラビアの関係は、最悪の状態に向かいつつあるようだ。宗教的側面から考えると、イランはシーア派のイスラム総本山を自認し、他方、サウジアラビアはスンニー派の総本山であり、2つの聖都メッカとメジナを擁しているという自負心がある。
湾岸地域における覇権の問題もあり、両国は事あるごとに対立してきたが、ここにきて、イランは一気に恫喝外交を始めたようだ。『サウジ危うし』の情報を流しているのだ。
イランのプレス・テレビが、ブログで伝えたところによれば、サウジアラビアはいま、極めて危険な状態にある。サウジアラビアのペルシャ湾に面する、東岸のアルカテーフ地域では、サウジアラビア軍とシーア派住民との間で、何度も衝突が起こっており、シーア派住民の側では2人、サウジアラビア軍側からも2人の死者が出ている。
サウジアラビア軍の兵士が死亡したのは、シーア派住民の誰かが、発砲した結果のようだが、そのことは厳しく規制されている、アルカテーフ地域に銃器が持ち込まれた、ということであり、今後それが拡大し、最終的には平和的なデモではなく、銃火器を使った抵抗闘争が、始まることを予感させる。
サウジアラビアとコーズウエー橋でつながるバハレーンに、イラク南部からと思われる銃器の密輸が試みられ、一部が拿捕されていることから考え、イラクその他から、アルカテーフにも銃器が流れ込んでいる、可能性は否定できまい。
イランは自信を持って、サウジアラビアの非民主的な、シーア派住民に対する対応が、このまま続けられれば、武装革命が始まると警告している。そのことは、サウド王家にとっては極めて、危険な状況であろうということだ。
つい2月の後半にも、数千人が参加する大規模なデモが、アルカテーフで起こっているが、これはシーア派住民の犠牲者二人を惜しむ、追悼のデモであったようだ。
このイランのプレス・テレビの報道は、湾岸専門家のリドワーン・リズク氏の、コメントを主とするものだ。イランとサウジアラビアとの関係を考慮すれば、大分拡大した論評と言いたいところだが、そう安易にも受け取れないのではないか。それはイランがサウジアラビアの危険と、銃火器を使用する革命運動が、起こることを予測したということは、単なる予測ではないからだ。
イランは今後、何らかの方法でサウジアラビアとバハレーンの反体制派に対し、銃火器を提供していくということではないのか。そうなれば、確かにサウジアラビアの平和的なデモ、瞬時に変化し、武力抵抗革命運動に様変わりしよう。