だいぶ前から、アメリカのアサド体制潰しの、意欲が減退したと書いてきた。それはサウジアラビアとカタールを、失望させるものであったことは、述べるまでもない。両国はアメリカの指示に従って、アサド体制を打倒すべく、膨大な武器や資金を、反体制側に提供してきていたからだ。
アメリカのアサド体制打倒意欲が後退すると、それにならって、サウジアラビアやカタールの支援も減少したようだ。そうなると困るのは、反シリア体制側の各ジハーデスト組織ということになる。
なかでもシリア人によって結成されたFSA(シリア自由軍)は、資金難に苦しんでいるようだ。彼等はサウジアラビアやカタールからの資金援助に、100パーセント依存してきていたからだ。
他のジハーデスト組織は、アルカーイダが主な資金提供者であるようだが、彼等もサウジアラビアやカタールの資金と、武器の援助に依存してもいた。こうなると、反シリア政府側の各組織は、サウジアラビアやカタールから送られる、資金と武器の奪い合いを、始めることになる。それがいまシリア国内で起こっている、反政府各派の戦闘を生み出しているのであろう。
FSAはいま戦闘員に対して給与を支払い、食料を与えなければならないのだが、資金不足から、武器の一部を他の組織に売り始めている、という情報がある。もちろん、FSAから離脱してシリア軍に、帰順する者もいるようだ。
一説によれば、FSAは22000発の弾薬と、ライフル銃80丁を売り、2万ドルを手に入れたということだ。そこまで反政府側の実情は、苦しいのかもしれない。
先に起こったFSAの軍司令官更迭騒ぎも、こうした脈絡から出てきたものであろう。サリーム・イドリス司令官が突然更迭され、その後釜にアブドルイラーハ・バシール氏が就任した。しかし、このアブドルイラーハ・バシール新司令官は、何がどうなっているのか分からないと語っている。
FSAのなかの軍事部門である最高軍事委員会(SMC)には、これまでも十分な資金と武器が与えられていなかった、と内情に詳しい人物は語っている。資金と武器の提供者たちは、そうすることによって、各派に戦闘を競わせていたのかもしれない。
問題は、こうした実情を前に、今後どのような戦闘が展開されるかと言えば、シリア軍にとって極めて有利なものに、なるのではないかということであろう。そして、そのような状況を踏まえ、今後反シリア勢力の政治部門は、どうなっていくのかということだ。次第に影が薄くなっていくことが懸念される。