ヨルダンは中東のほぼ中心部に位置する、戦略的要衝の国家だ。それだけにアメリカは同国に対し、特別の配慮を払ってきていた。しかし、現在の状況はそれを、許さなくなっているのかもしれない。
中東では各国で戦闘が繰り返されているが、最近ではレバノンが危険になってきている。それはレバノンで内戦が起こる可能性と同時に、反イスラエルのヘズブラの動きが、シリア体制に対する支援だけではなく、イスラエルにも向かう可能性が、高まってきているからだ。
残念なことに、現在のイスラエルでは、レバノのヘズブラとの戦闘を、うまくやりおおせる状況にはない、とアメリカは判断したようだ。そうなればアメリカ自身が、中東に乗り出さなくてはならなくなるということだ。
ヨルダンはその最適地ということのようだ。ヨルダンからはレバノンへの軍事侵攻も偵察も容易であり、しかもヨルダンは親米国でもある。シリアについても同様に、ヨルダンは好立地と言える。
そのシリアに対する対応のために、ヨルダンにはアメリカが設立した、戦闘員の訓練キャンプができたようだ。このことについて、ヨルダンの内務大臣マジェド氏は否定しているが、それはシリアを意識しての発言であろう。
ヨルダンにはヤジューズキャンプが首都アンマンの北にあり、ここではパレスチナ自治政府、イラク、リビア、アフガニスタンなどの戦闘員が、訓練されているという報告がある。そのほかに警察の訓練所として、アルムワッカキャンプがアンマンの東に設立されている。
最近になって、シリアとヨルダンの国境地帯での、戦闘が激しさを増してきているようだ。それはヨルダン内にある難民キャンプで、戦闘員をスカウトする反政府側と、それを阻止しようとするシリア政府側の戦いが、激しくなってきているのであろう。
シリアとヨルダンの国境地帯について、先述の内務大臣マジェド氏は『 国境を100パーセント守ることなど、どこの国にもできない。』と語っているが、そのことはこれから先、ヨルダンと同胞関係にある反シリア軍(FSA)だけではなく、外国からシリアに集まってきた、アルカーイダ系列の戦闘集団も、ヨルダンに潜入することが、容易だということではないのか。
そのことは近い将来、ヨルダン国内が危険になっていく、ということではないのか。すでにトルコ国内でも外人ジハーデストの動きが、危険視され始めているし、レバノンでもそうだ。 ヨルダンだけが例外であり得るはずがなかろう。