最近になって、どうやらサウジアラビアのバンダル情報長官が、更迭されたようだ。そして彼の後任には、ムハンマド・ビン・ナーイフ殿下が就任した、という情報伝わってきている。
今年の1月の始めに、バンダル情報長官が辞めさせられるのではないか、という記事を書いたが、どうやらそのとおりになったようだ。バンダル情報長官はやり過ぎで、あちこちから悪評が出ていた。
なかでもロシア訪問時の裏話を聞くと、ひどいものだったようで、彼の強気の発言が、ロシアがサウジアラビアに対し、ミサイル攻撃も辞さない、という発言をプーチンにさせたという話もあった。
一説によれば、バンダル情報長官はロシアのプーチン大統領に対し、シリアへの支援をやめなければソチ・オリンピックをテロで台無しにしてやる、と語ったというのだ。それを受け、プーチン大統領はサウジアラビアに対する、ミサイル攻撃を警告したというのだが?
ことの真偽のほどは分からないが、世界中で問題になっている、アルカーイダテロ組織の実質的なスポンサーであり、リーダーはサウジアラビアのバンダル情報長官だ、というニュースもあちこちから流れていた。
バンダル情報長官が仕組んだ、各種の過激な工作は、レバノンで起こった昨年11月の、イラン大使館を狙った爆弾テロ事件で、サウジアラビアがその裏にいたことが、明らかになってしまった。
こうなるとやはり、バンダル情報長官の責任問題が、サウジアラビア王家の内部で、取り上げられざるを得なかったのであろう。そのことに加え、今回のバンダル情報長官の更迭の裏には、サウジアラビア政府の対米関係、対ロシア関係の変化があったのではないか。
以前にも書いたが、サウジアラビア政府はアメリカの進める、中東問題への関与で、積極的に協力してきていた。イランに対するアメリカの締め付けや、シリアに対するアサド体制打倒で、サウジアラビアは本格的に絡み、果たして来た役割は少なくないたのだ。
しかし、サウジアラビアが積極的に関与した、イランとシリアに対するアメリカの対応は、次第に腰砕けとなり、イランとの間では雪解けが始まっている。当初イランを攻撃するかのような、強硬な立場に立っていたアメリカは、最近になって、石油関係企業ばかりではなく、広範にわたるアメリカ企業のイラン進出が始まっている。
シリアに対しても同様で、最初は明日にでもシリアを攻撃し、アサド体制を打倒するといきまいていたオバマ大統領は、その後、ロシアの助言もあり、化学兵器の処理を、国連に委ねることで妥協している。
これではサウジアラビアの立場は無くなろう。それどころかイランやシリアは安心してサウジアラビアに対し、敵意をむき出しにすることが出来よう。イランは最近になり、サウジアラビア非難を強化している。
バンダル情報長官が更迭された裏には、そうしたイランやシリアとの関係悪化、アメリカの両国に対する対応の変化などを受けた、サウジアラビア政府の外交方針変更に伴うものなのかもしれない。
その方針変更の一端は、サウジアラビア政府がエジプトのロシアから輸入する兵器代金30億ドルを、肩代わりするという情報が、伝わってきている。これは明らかに、サウジアラビア政府のアメリカに対する、不満の表明であろう。