モロッコの南側に西サハラという地域がある。そこは元スペイン領でいったんはモロッコと、モーリタニアに引き渡された。モーリタニアはその後、西サハラの分離を認めた。しかし、モロッコはそう簡単には手放そうとしなかった。西サハラの住民はモロッコからの分離独立を望み、ポリサリオ戦線を結成した。
このポリサリオ戦線をリビアやアルジェリアが支援し、今日に至っている。私が西サハラ問題に首を突っ込んだのは1978年であり、アルジェリアの首都アルジェから南部の町バッシャールに飛行機で飛び、そこからは軍用ジープで12時間走り続け、南部のチンドーフに行き、そこで西サハラの人々に出会った。
そのとき世話役をしていたのが、アブドルアジーズという好青年だった。確か彼の歳は私とあまり違わなかったと思う。その彼が何年か前には、大統領に就任したというニュースを目にした。
西サハラのモロッコからの分離独立闘争は、他の地域のものとは異なり、それほど激しい戦闘を展開しているわけではないが、もうかれこれ40年近くも続けているのだから、大変なことであったろう。
最近そのポリサリオ戦線が強硬な発言を、モロッコ政府にしたのが目に付いた。もし、モロッコ側が西サハラ問題で、妥協しないのであれば、武力闘争を再開する、といった内容だったと思う。それを目にして懐かしかったのと同時に、その裏にはアルジェリアとモロッコの確執があると思った。それが最近拡大しているのであろう。
ポリサリオ戦線をリビアが支援するのは、カダフィの革命好きがさせたことだ、と簡単に言えるが、アルジェリアが支援するのは、そこに資源があるからに他ならない。西サハラには金があろうし、石油ガスも埋蔵しているものと思われる。
以前、モーリタニアの大使と食事をしたとき、彼はモーリタニアの北東部には金鉱脈があると語っていた。隣接するマリ共和国は、歴史上産金国で有名だった。したがって西サハラには金がある可能性が高いし、世界の鉱山会社は既に具体的な資料を持っていよう。
そのためにモロッコは西サハラを、簡単には手放したくないのであろうし、アルジェリアもポリサリオ戦線を、支援しているのであろう。
ポリサリオ戦線の強気の発言がなされたことには、二つの可能性が考えられる。アルジェリア・モロッコ関係が緊張し始めている、西サハラの地下資源が確認され、世界の鉱山会社が触手を動かし始めた。
今では衛星カメラで写真を撮り、それを分析しただけで地下に何が眠っているのか、簡単に分かる時代だ。西サハラに地下資源があることが、確認されても不思議はあるまい。