40年以上にも渡るカダフィ体制が、人民の蜂起という革命によって、あっさり打倒され、彼の二人の子息と自身は、無残な殺され方をした。あのカダフィの力は、一体何処へ行ってしまったのだろうか。なぜかくも容易にカダフィ体制は打倒されてしまったのだろうか、といぶかる人は少なくなかろう。
あれから3年の歳月が過ぎようとしているいま、リビアではカダフィの亡霊が、リビアの現政府を脅威に陥れている。リビアの南部地域でカダフィが掲げた緑の旗がはためき始めているのだ。
カダフィ時代に恩恵をこうむっていた、黒人系リビア人たちが蜂起したのだ。もちろんそればかりではない、他のリビア人も立ち上がり始めている。革命後の新体制のなかで、黒人系リビア人は差別され虐待され、場合によっては殺害されてきたし、地方の部族は中央政府から、差別されてきていたためだ。
もう一つの問題は、リビア各地に現在なお存在する、各部族や宗教グループ其の他の集団が結成され、彼らによってミリシア軍団が結成され、戦闘が繰り返されているのだ。そため中央政府の閣僚や地方の警察署所長などが、テロの対象になっている。
閣僚の何人かは身の危険を感じ、辞任したり辞任したいと言い出しているために、政府がまともに機能できなくなっている。そのことに加え、ミリシアたちによって石油生産施設や、石油積み出し港が襲撃され、幾つかは彼らの支配下に置かれ、彼らが勝手に石油を外国の企業に売っているのだ。
こうした状況から石油輸出で外貨を得て、国内の必需品を輸入するという、通常の活動が出来なくなり、中央政府は国家公務員に対する賃金の支払いも、厳しい状態になっている。そのことはこれまで、何度もゼイダーン首相が、警告しているのだ。
一説によれば、反政府のカダフィ派のリビア人たちが、リビア南部の地域でカダフィが唱えた、ジャマヒリヤ方式を再開しているとのことだ。今になってみれば、カダフィ時代のリビアは天国であったろう。家も車も生活も病院も教育も、ほとんどが無償だったのだから。
こうした事情から、今後カダフィ派の活動が活発になれば、他の地域のリビア人もこの動きに迎合する可能性があろう。そうなれば、リビアの現体制は不安定化し、ますます統治機能を失っていくことになろう。
その場合、リビアの現政府が唯一頼れるのは、カダフィ体制を打倒してくれた、アメリカ、イギリス、フランスに、再度介入してもらうことであろう。