イランのザリーフ外相が、きわめて重要なことを指摘する発言をしている。それは、現在シリアで戦っている反政府側の、ジハーデストたちが勝利するようなことになれば、周辺諸国は彼らの、次のターゲットになるというのだ。
確かに、現在世界中から集まっている、シリアの反政府側のジハーデストたちは、現段階ですら周辺諸国にとって、脅威となっている。たとえば、彼らのシリアへの通過地点となっているトルコには、ジハーデストたちの多くの事務所や、拠点が出来ているというのだ。
そればかりか、トルコ国内には複数のジハーデスト訓練キャンプが出来ているということだ。たとえば、トルコの西部にあるボル山地帯には、ジハーデストのための訓練施設や、シェルターが出来ている、とトルコの情報関係者も認めている。もちろん、政府はそれを認めているわけでない。
しかし、これまでに既に何度かの、ジハーデストによるとみられる、テロ犯行が起こっているのだ。爆弾テロはその典型例であろう。ジハーデストたちがトルコの領土を経由して、シリアに入国していくにあたっては、ジハーデスト側とトルコのいずれかの機関との間には、何らかの取引が成立しているはずだ。そうでなければ、そう簡単にはトルコ領土を、通過できないからだ。
以前、トルコ国内からシリアに武器が輸送されたとき、現地のトルコ警察がそれを摘発したが、トルコ政府はシリア国内の、トルコ系シリア人に対する支援だとして、無理やり通過させたということがある。しかし、それをまともに信じるお人よしのトルコ人はいまい。
いずれにせよ、今後シリア国内状況がどちらに転んでも、トルコ国内にはジハーデストによるテロの、危険性が高まるということであろう。シリア政府軍が勝利すれば、ジハーデストたちの逃げ込む先はトルコであり、そうなればトルコ軍や警察は対応を迫られ、ジハーデストとの戦闘が予測される。
また逆に、シリアでジハーデスト側がシリア政府軍に勝利することになれば、ジハーデストたちはトルコへの攻撃をかけ、トルコの一部を彼らの不動の地域とすることを考えるだろう。そうなればそこはイラクとイランへの攻撃拠点となりえようし、ヨーロッパへの道も開くことになろう。
トルコやイラン・イラクばかりではない。もし、シリアでジハーデストたちが勝利するようなことがあれば、イスラエルは攻撃の対象とされよう。相当量の新しいタイプの武器兵器が、シリア国内に持ち込まれていることに加え、以前からシリアにある兵器も使われるのだから、イスラエルにとって危険度が数倍も上がるということだ。そして、その戦闘方式は正規軍同士の戦いとは全く異なるために、イスラエルは苦戦することになろう。
ジハーデストのシリアへの浸透で、既に苦しんでいる国がある。それはシリアの西側に位置するレバノンだ。現在の段階で既にジハーデストがレバノン北部の主要都市、トリポリに攻撃をかけ始めているのだ。
レバノン政府は南部にヘズブラという一大勢力を抱え込み、他方ではジハーデストの攻撃が起こっているのだ。述べるまでも無く、ヘズブラはシリア政府側に立っており、ジハーデストとは敵対関係にある。本来であれば、スンニー派が中心のレバノン政府は、ジハーデストの攻撃対象にはならないはずなのだが、話はそう簡単ではない。
ジハーデストはレバノン政府が、スンニー派色の強いものであるか否かに関わらず、彼らの拠点国としてレバノンを落としたいのだ。その状態が今後も続けば、レバノンは1975年に始まり、15年にも及んだ内戦同様の戦闘状態に、再度引き込まれる危険性があるということだ。
シリアの内戦はここに来て、シリアだけの問題ではなく、トルコ、イラン、イラク、レバノン、イスラエル、そしてその先にはヨーロッパにも、災禍をもたらす危険なものに、なってきているということだ。そのジハーデストたちのスポンサーはどの国であり、彼らをシリアに送り込んだのは、どの国なのかを確認しておく必要があろう。その国は今後欧米によって、直接・間接的に崩壊に導かれる可能性があろう。